うつ病薬の副作用報道で揺れる治療現場、自己判断の休薬はかえって危険

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「この薬を飲んでいて大丈夫なのか?」「服薬を中止したい」--。春以降、病院の精神科を訪れるうつ病患者の多くがこんなせりふを投げかけるようになった。

3月、抗うつ薬「パキシル」など4種類のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬、次ページ図効き方1)を服用した患者が攻撃性を増すと報告された。一部の過熱報道が、患者や周囲の不安に輪をかけた。「自主的に服薬を中止し、自殺寸前まで行った事例もある」と、日本うつ病学会理事長の野村総一郎・防衛医科大学校教授は厳しい顔で話す。

うつ病は、抑うつ、興味の減退、食欲低下、不眠、焦燥、気力減退、罪責感、集中力減退、死にたくなる、のうち五つ以上が2週間以上続き、仕事、学業などの活動ができにくくなる状態を言う。

日本のうつ病患者は650万~700万人。薬の有効性は約4割といわれているが、どの薬もまったく効かない難治性うつ病の患者も2~3割を占め、薬だけではない“ケア”が必要な疾患だ。

抗うつ薬は相対的に見て副作用が少ない。いわば“元気を出させる薬”であるために、攻撃性の副作用はもともと認識されていた。ただ、服薬中止に至るほど重症のケースは1%にも満たない。病気が治癒した場合でも、1年~1年半は投与量を減らさず、ゆっくり休薬するのが一般的。

「服用を突然やめるのは非常に危険。自己判断の休薬は絶対に避け医師に相談してほしい」(野村教授)。

SSRI は脳内の神経伝達物質のうち、セロトニンの働きを選択的に強める。現在の抗うつ薬市場の主流で、パキシルがその代表だ。1960年代から使われてきた三環系の改良版だが、便秘や尿が出ないといった副作用が少なく、臨床現場では第1選択薬として処方されることが多い。


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