NECの携帯電話に異変! ドロ沼からの脱出劇

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ソフトバンク再開秒読み 逆風の中の強気計画

ソフトバンクの孫正義社長の口から晴れやかな言葉が飛び出した。「近くNECのすばらしい端末が出る」。2月上旬、同社の07年度第3四半期業績発表会での一コマ。ソフトバンクモバイルのNEC機種は07年春を最後に途絶えていた。新機種の出ない1年、舞台裏ではこんなやり取りが繰り返されていた。

NEC側が提案した試作品を、孫社長が手に取る。数分経過。「ふーん」。以上、提案機種却下。「屈辱的」(NEC関係者)には相違ないが、孫社長を魅了する個性的な端末を開発できなかったのだから仕方がない。そのソフトバンクからも、早ければ08年度上期にも新機種が発売される模様だ。

やっと回り出した好循環。と思いきや、統括する大谷進執行役員常務の表情は硬いまま。「底を脱した? どこが底か、まだわかりませんよ」。当然といえば当然だ。これから国内市場は規模縮小の冬の時代に本格突入する。

ドコモなど通信事業者は販売奨励金を廃止して端末価格を引き上げる一方、家族間などの通信料を下げる新料金制度で競っている。端末の買い換えサイクル長期化は必至で、08年の出荷台数は4400万台と、前年を750万台以上割り込むという予測もある(調査会社IDC試算)。三菱電機(07年度出荷台数210万台)が国内市場から退場しても、この減少分は到底埋まらない。

以前は電電系メーカーを優遇し、出荷低調なら期末に大量調達をかけてくれたドコモも「今やそんな余裕はない。自分の生き残りで精いっぱい」とガートナーの光山奈保子主席アナリスト。その点、市場競争にもまれてきたシャープなど家電系メーカーはまだ“免疫”がある。

「1000万台に乗せなくては事業じゃない」。矢野薫社長はそうハッパをかけ、07年出荷台数の実に倍以上の目標を掲げる。現場に気力は戻った。土俵際で何とか踏ん張った5位メーカーがもう一段飛躍したければ、次の経営判断しかない。海外か、同業買収か--。「4年先まで事業プランはある。1000万台は単なる通過点。撤退? 考えていないですね」(大谷常務)。大逆転には相当タフな道のりが待っている。

(杉本りうこ=週刊東洋経済)

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