日本のホテルが超好況を素直に喜べない事情 「高い」「予約が取れない」…バブルへの警戒も

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週刊東洋経済2月6日号(1日発売)の中吊り広告です。写真をクリックすると拡大します

週刊東洋経済2月6日号(2月1日発売)の特集『ホテル激烈』は、ビジネスホテル市場の激戦の舞台裏に加え、開発ラッシュに沸くラグジュアリーホテルの最前線、上手なホテル予約テクニックなど、ホテルに取り巻く最新動向を網羅した。

今、ホテル業界は「30年に1度」と言われる活況を呈している。中国の景気減速や株式市場の混乱など、国内景気の先行きには不透明感も漂うが、ホテル業界はその中でも異質の熱狂に包まれている。「世間で発表されている経済指標よりも、私の肌感覚の景気はずっといい」とは、大手ビジネスホテル幹部の弁だ。

訪日外国人に人気の「アパホテル歌舞伎町タワー」(左)と「ホテルグレイスリー新宿」(右奥)(いずれも東京・新宿歌舞伎町)

需給はひっ迫している。2015年の全国のホテルの稼働率は83.6%(前年比1.5%増)と上昇、平均客室単価は1万4624円(同13.1%)に達した(英調査会社STRグローバル調べ)。

「20年までに自社と提携先を合わせた客室数を、現状の5.5万室から10万室に拡大する」。ビジネスホテル大手チェーン、アパグループの元谷外志雄代表は野心を隠さない。「いい条件のオーナーさえ見つかれば、すぐにでも出したい」。他社のホテル幹部も次々とそう口にする。

過熱する付加価値競争

しかし、需給ひっ迫に伴う宿泊価格の高騰に戸惑いを示すホテル関係者も多い。「インバウンド需要が増えた結果、今までご利用していただいていたお客に提供できていないのが心苦しい」(中堅ビジネスホテルチェーン担当者)。また現在の活況を「バブル」と評する声もあり、「東京五輪後でも利用を続けてもらうために、今のうちにファンを増やさないと」と、リピーター獲得に意欲を示すホテル関係者も多い。

東京・大阪の街中では、スーツケース片手のアジアからの観光客を目にする機会が増えた

リピーター獲得へ向け過熱しているのが、ビジネスホテルの付加価値競争だ。東横インなどの大手は、大量出店によるコスト競争力を武器に「宿泊特化型」と言われる低価格ホテル路線を維持するが、その他のビジネスホテルは差別化に躍起だ。

「デザイン、サービス、設備それぞれで差別化を図る」。そう語るのはホテルココ・グラン高崎の牧本祐介・総括支配人。群馬・高崎駅直結の同ホテルは、ロビーに樹木を植え、小川を流すなど自然の雰囲気にこだわる。全室にマッサージチェアや電子レンジを完備するほか、顧客の要望を逐次データベース化し、サービスに活かしている。

同ホテルは、平均的なシングルルームから、1泊8万円のプレミアムスイートルームまで備える。「ハイクラス・ビジネスホテルというジャンルが認知されてきている」と、ホテルココ・グランを運営する木本製菓の木本貴丸専務は話す。

その他にも朝食だけでなく、夕食も無料にするホテル、温泉や有機野菜の料理など、「エコ・健康」を打ち出して女性ファンを取り込むホテルなど、差別化競争は過熱の一途。ホテル不足の裏側で、熾烈な競争が繰り広げられている。

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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