三井住友が日興を落札、決断を迫られる大和証券

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三井住友が日興を落札、決断を迫られる大和証券

3メガバンクグループがそろって名乗りを上げた日興コーディアル証券の買収劇は、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)による落札で幕を閉じた。

買収総額は5450億円。リテール(個人分野)の日興コーディアル証券の純資産は約3900億円。そのうち、現金2010億円が親会社の米シティグループに残される。ホールセール(法人分野)を担う日興シティグループ証券の大部分も獲得するとはいえ、3000億円前後ののれん代が発生する高値の買収だ。

シティのニーズと一致

SMFGが8000億円の公募増資計画を引っ提げて、意地を押し通したのには理由がある。3メガの中で収益力こそ高いものの、資産規模では後塵を拝する。特に傘下で一定規模の総合証券と信託銀行は、長らく欠落したパーツで、これは耐えがたかった。

証券事業ではホールセールの大和証券SMBCへ4割出資し、一定の成果を上げている。だが、リテールの大和証券や親会社の大和証券グループ本社への出資話には、独立性を守りたい大和の経営陣が首を縦に振らなかった。「日本一の投資銀行を目指して10年経ったが、関係が進展しない」(SMFG幹部)。いらだちを募らせていた経営陣にとって、日興売り出しは千載一遇のチャンスだった。

ただし、大和証券SMBCの支配権を持たないため、リテール(日興コーディアル)のみを取り込んでも、商品と販路がスムーズにつながらないおそれもあった。今回の買収で、ホールセール(日興シティの債券・株の引き受け、国内事業法人への対応等)を引き継いだのには、こうした背景がある。

逆にこれは米シティにも好都合だ。三菱UFJフィナンシャル・グループは、ホールセールでは、9000億円を投じた米モルガン・スタンレーとのビジネスを構築中。みずほフィナンシャルグループはホールセールに強いみずほ証券を傘下に持ち、リテールの新光証券と合併させた。そのため、両社ともホールセールには食指を動かさず、関心は資産運用の日興アセットマネジメントとリテールとの「セット買収」にあった。

だが、日興アセットは外資や生保、証券会社など多数の買い手がつき、単独での高値売却ができる。一方、ホールセールだけを残しても今後のビジネス展開は難しい。

米シティは資産が毀損しており、引き当てすれば資本不足に陥る。今般、米財務省が行ったストレステストでも追加の資本注入が必要と判定されたとみられる。有形普通株主資本(TCE)の不足が指摘されていたため、今回の取引で利益剰余金を吸い上げ、「約25億ドルのTCEが生じる」(シティ)ことも大きかった。

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