三井住友が日興を落札、決断を迫られる大和証券

拡大
縮小

逆風下の再編推進

悲願を達成したとはいえ、SMFGの道のりは平坦ではない。不況下で前向きの資金需要が乏しく、当面は証券の営業収益も上がりにくい。

さらに今回の買収で資本余力を費消した。8000億円の公募増資を敢行し、Tier1(中核的自己資本)比率で8%を維持したうえで、1500億円程度の余力を残す皮算用だが、耐久力は高くない。他2メガに比べて保有株式の損失リスクが低いが、今年度も与信費用の高止まりは避けられない。銀行への貸し渋り批判の中で、アセットのリスク抑制も難しい。

日興が主幹事を務める約700社のうち、三菱東京UFJ銀行がメインバンクの会社が約200社あり、それらは三菱との関係が深い。独立色を売り物にする野村証券の切り崩し攻勢も受けるだろう。

最大の懸案は大和証券グループ本社との協議。日興を傘下にぶら下げただけでは資源が分散し非効率だ。「お許しいただければ、将来、大和証券SMBCを統合したい」(奥正之・三井住友銀行頭取)。「大和との連携強化まで進まなければ今回のディールは完成形と言えない」(SMFG幹部)。「野村を抜く日本最大の投資銀行」を説得材料に、SMFGは大和に決断を迫る構えだ。

■業績・事業概要など三井住友FGの詳細はこちら

(大崎明子 撮影:今井康一 =週刊東洋経済)

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT