《財務・会計講座》REITを考える~不動産取引の市場化の意味~
第二次世界大戦後の高度経済成長期を契機に、需要の拡大によって土地の取引価格は急上昇し、その結果、説明力を失った収益還元法にかわって周辺相場を参考とする取引事例法が主流となっていった。1990年の不動産向け融資の総量規制を機に不動産バブルも終焉し、土地の値段は下落の一途をたどり、現在では土地を利用して生み出される収益に見合った価格で取引される時代が再びやってきた。土地も、「保有によるキャピタルゲイン」狙いではなく、明治時代のようにその「利用価値に見合った価格」体系に戻ったわけである。
現在上場しているREITの利回りは7.32%(2009年4月28日現在、JAPAN-REIT.comによる)と、一時の5%程度に対してかなり高くなっている。これは、金融危機に端を発した不動産不況でREITのリスクが高くなったためである。金融危機が起こる前の利回り水準である5%程度を基準に考えると、年間500万円の収益を生む不動産物件につく価格は1億円(=500万円/5%)であり、不動産市場では1億円で売買されることになる。その物件をどのように活用したら最も収益が上がるかという観点から再開発の青写真が描かれ、その物件を最も有効に活用できる、つまり最も高い入札価格を提示できるプロジェクトに落札される。たとえば六本木の旧防衛庁の跡地に立てられた「東京ミッドタウン」は、その土地を活用して最も収益が上がると考えられた、商業施設、オフィス、ホテルなどの複合施設の形態で再開発が進行したわけである。
このように現在では、土地そのものの利用価値に応じた価格が形成され、投資リスクの大きさと利回りとの比較で物件の割高感や割安感が形成され、市場で売買される。不動産も、株式や債券といった金融商品の仲間入りを果たしたわけである。このリスクとリターンのバランスに応じて資金が移動し、割安な(つまりリスクに比べてリターンの高い)物件は需要が増大して値上がりし、逆に割高な物件は値下がりし、リターンとリスクのバランスが均衡するまで物件間での資金移動は続く。
資金は国内だけでなく国境を越えて移動するわけで、不動産も国際金融商品となった。例えば、銀座の一等地である銀座4丁目の不動産物件のリターンがニューヨークの一等地である5番街の不動産物件に比べて高ければ、資金は米国から日本に流入し、銀座4丁目の土地価格は上昇(リターンは低下)し、日米でリターンが均衡化した時点で国境を越えての資金移動は終了する。これはまさに不動産の金融商品化、グローバル化であり、不動産も資本市場の理論で動くようになったわけである。これが「不動産取引の市場化」が意味するところである。