消費税増税なくして社会保障は守れない−−衆議院議員 与謝野 馨
与謝野馨氏は、消費税増税による社会保障財源確保を主張する自民党内グループのリーダーだ。民主党のみならず、「上げ潮派」と呼ばれる「小さな政府」を志向する党内グループとも、財政再建や社会保障問題において価値観を大きく異にしている。与謝野氏はなぜ不評の消費税増税を唱えるのか、党内屈指の政策通に問題認識を聞いた。
小泉内閣で経済財政担当大臣を務めた与謝野馨衆議院議員は、自民党屈指の政策通として知られる人物。与謝野氏が会長を務める同党の「財政改革研究会」(以下、財革研)は消費税の社会保障目的税化の必要性など、活発な政策提言を続けている。与謝野氏ら財革研の主張は中川秀直元幹事長ら「上げ潮派」と呼ばれる「小さな政府路線」を標榜するグループとは対極をなしており、党内世論を事実上二分している。そして財革研はさる2月には、国の特別会計、独立行政法人などに隠されているといわれる「埋蔵金」(官僚が秘匿する財政上の隠し金)が実在しないとするリポートを発表。財政のムダを削減するだけでは増大する社会保障費を賄うことはできないとする分析結果を明らかにした。党内外に波紋を巻き起こすとともに、国民に消費税引き上げなど負担を求める真意を、与謝野氏に聞いた。
--基礎年金に関する国庫負担を2009年度までに現行の3分の1から2分の1へ引き上げなければならないのを手始めに、医療や介護など社会保障に関する安定的な財源確保が急務になっています。にもかかわらず、政局は混迷を深め、きちんとした対応策がいまだに打ち出されていません。そうした中で、党内でいち早く国民負担増の必要性を打ち出した真意はどこにありますか。
まず申し上げたいのは、国民皆年金、国民皆保険の仕組みは世界に誇るべき優れた制度だということです。この優れた社会保障制度によって、国民はおカネの心配をせずに、高度な先端医療を受けることができる。こうした仕組みを何としても持続させていかなければならない。
国民の皆様には二つのことをよく考えていただきたい。一つ目は、国と国民は実は同一のものであり、利害が相反する存在ではないということです。そして二つ目として、優れた制度を維持するためには、税や保険料が必要ですが、財源トータルで見れば、税と保険料に本質的に違いはないということです。
ただ、社会保障制度を持続可能なものにするためには、保険料の引き上げを通じて国民負担増を求めることはやや限界に来ているのかなと感じています。保険料を払わない人の存在が物語るように、医療、年金とも保険料を通じての収入増がだんだんと期待できなくなっているのではないか。これら二つの制度を維持するためにも、税を通じての国民負担増をお願いする時期に来ている。