消費税増税なくして社会保障は守れない−−衆議院議員 与謝野 馨

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社会保障への支出で消費税の逆進性は緩和

--08年度予算における特別会計の歳出総額は368兆円に上る一方、特会間の入り繰りなど重複計上分を除いた純額は178兆円に縮まり、そこから国債償還費や利払い、社会保障給付、地方交付税交付金など特会のムダ遣いと異なると考えられるものを除いた歳出は11兆2000億円にとどまるとも、財革研の報告書は述べています。しかもその中には必要な歳出も含まれており、埋蔵金と呼ばれるものはないとしています。これとは対照的に、民主党や党内の「上げ潮派」は莫大な埋蔵金があると主張しています。財務省が外為特会の積立金や財政融資資金特別会計の金利変動準備金の取り崩しをいやがっていたところを、自分たちが見つけて取り崩させたと語る「上げ潮派」の人もいます。

そういう事実はありません。外為特会からの繰り入れは以前から行っているし、財政融資資金特会の金利変動準備金も金利が安定的に推移しているので国の借金返済のために使うことにしただけの話です。しかも、これは一回限りのものです。

--民主党が埋蔵金を喧伝している理由はどこにあると考えますか。

それは選挙に勝ちたいからでしょう。責任ある立場に立ったら、そんな根拠のないことは言えなくなると思う。

--財革研は、フローとストックという分け方をしたうえで、財政にムダがあれば、できるだけストックである債務の返済に充てていく、そしてフローで必要なおカネは社会保障を中心に恒久的な財源を確保していく考え方を表明しています。

06年、日本の貯蓄率は急に上がった。やはり国民の将来不安が少し増えたのではないかと思っています。年金や医療が将来も確かなものであることを国民の皆様にきちんとお示ししないといけない。それによって個人の消費活動も活発化していく。将来の安心のために税をご負担いただくというのはまっとうな道だと私は思っています。

--税の負担のあり方を考える場合には、所得税、法人税、相続税、そして消費税が焦点になると思われますが、なぜ消費税の引き上げを主張しているのでしょうか。

法人税については、企業が世界の中で競争している以上、世界の平均的な税率よりも懸け離れた税率になると、競争力を阻害してしまう。法人税を低める圧力はあっても、税率を引き上げる理屈は見つからない。所得税の最高税率は少し下げすぎたかなという感じがしており、これは工夫の余地がある。相続税や酒税は現状の規模から見ても、大きな財源にはなりえない。

そうなると、付加価値税に着目せざるをえません。付加価値税は日本では消費税という、あたかも消費者が負担するもののような名称となっていますが、要は企業の粗利益に課税する形を取っている。日本の5%という数字は福祉が充実しているヨーロッパの国々と比べても格段に低い。それゆえに、税率を上げる余地があると思っています。

--専門家からは、所得税を納めていない低所得者には、消費税引き上げに合わせて給付付きの税額控除を導入することで、逆進性を弱めることができるとの指摘もあります。

いわゆる戻し税という考え方ですが、なかなか今の制度になじまないのではないでしょうか。消費税の逆進性を問題視する方がおられるが、所得税で累進性を確保していることや、社会保障給付の段階で傾斜配分をかけている(所得再分配を行っている)ことから、消費税だけを取り出して逆進性が強いと論じるのはやや一面的ではないか。

国民が何のために負担しているかが明確にならなければいけないと思う。だから、われわれ財革研では消費税という名前をやめて、社会保障税という名称がいいと提案している。これは何のために負担しているかが明確になるという利点に加えて、税を預かる政府側も、官の肥大化には使わずに国民に全額を還元しますという宣言に等しいものです。

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