消費税増税なくして社会保障は守れない−−衆議院議員 与謝野 馨
道路特定財源からの転用では財源は不十分
--道路特定財源など、特定財源や目的税には財政の硬直性の問題などマイナスのイメージが付きまといます。あえて社会保障目的税を打ち出した理由はどこにありますか。
今の道路財源はオーバーフローしてしまっている。おカネがあるから道路を造るという発想が出ていることが問題であり、財政規律の堕落と言っていい。これに対して、社会保障税については、全額を社会保障に充てても十分に足りるのかという問題が常につきまとう。背の高さでは、税よりも社会保障費全体のほうが高い。たしかに、財政の教科書が言うように、一般財源が望ましいのはそのとおりですが、社会保障費の増大が続く中で、硬直性の問題はおそらく起こらない。
--道路特定財源を見直して社会保障財源に充てたらどうかとの指摘もあります。
それができたとしても、捻出できる額は年間にせいぜい数千億円ですね。消費税率1%は2兆5000億円に相当し、やがては3兆円近くになります。数千億円では社会保障の財源としては不十分です。
--消費税率を引き上げるとともに、基礎年金を全額税方式に変更すべきとの意見も、党内から持ち上がっています。
税方式を何のために行うのかということです、一つには、そういえば消費税引き上げを実現しやすいという考え方、それから国民年金保険料の未納・未加入問題を解決できるという考え方に立っている。しかし、未納・未加入の人は、基礎年金受給者全体の5%程度にとどまる。その5%の未納・未加入を理由に、制度全体をひっくり返していいのかという問題がある。また、税方式への移行には40年もかかる。さらに、全額税方式にすると、多少消費税を上げたとしても、財源不足は解消できない。そして、企業が基礎年金給付のために負担している3兆5000億円をどうするかという問題もあります。税方式にすれば、保険料を集める手間は省けますが、一方で財源確保の問題が出てくる。そんな制度を導入していいのだろうかという疑問を持っています。
--財革研のメンバーは二十数人にとどまり、党内ではマイノリティのように見えます。はたして、勝算はありますか。
小さな政府を誤解している方がいます。それから、新古典派の方々は、小さな政府の下で、福祉を切ってしまおうという考え方の持ち主ですから、われわれとは違う。自民党の多くの議員は本当に必要なことはわかっていますが、選挙を気にしているだけですよ。
(岡田広行 撮影:梅谷秀司=週刊東洋経済)
よさの・かおる
1938年生まれ。東京大学法学部卒。会社勤務、中曽根康弘事務所長などを経て、1976年衆議院議員。文部大臣、通商産業大臣、自民党政務調査会長、経済財政政策担当・金融担当大臣、内閣官房長官などを歴任。現在、自民党財政改革研究会会長。
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