自動車業界、急ブレーキ後はしばらく徐行運転が続く《スタンダード&プアーズの業界展望》
生産調整は峠越えが近い
国内市場、海外市場を問わず自動車販売が急激に落ち込んだのに対し、日本の自動車メーカーは大幅な減産で対応した。2008年通年の国内生産台数は前年と大きく変わらない水準で推移したが、2009年に入ってからの国内生産台数は1月が前年同月比41%、2月が同56%の水準まで低下した。スタンダード&プアーズでは、生産台数は引き続き低水準で推移するものの、2008年10月から2009年3月にかけての大幅な減産で在庫水準の適正化が進んだとみており、4−6月期中に底打ちするのではないかと考えている。ただし、底打ち後から年末までの生産台数は2008年の7割程度の水準にとどまると予想している。
為替リスクは今後も続く
日本の自動車メーカーは長年をかけて現地生産比率や現地調達率の引き上げを進めてきたが、為替変動は引き続き収益性に大きな影響を与えている。トヨタは部品の調達から車両製造まで日本国外で完結させるIMV(International Multi-Purpose Vehicle)プロジェクトなどを通じて現地生産比率や現地調達率の向上を図ってきた。しかし、2008年に急激な円高で収益が大きく圧迫されたことから、トヨタは為替変動リスクのさらなる低減に向け、中長期的に現地生産比率や現地調達率の一段の向上に取り組むとスタンダード&プアーズはみている。
四半世紀以上前から米国現地生産に乗り出し、日本の自動車メーカーの草分けとなったホンダは、現地生産や現地調達の体制整備が米国市場に参入している非米系メーカーのなかでもっとも進んでいるとみられる。しかし、そのホンダさえも、今般の円高を教訓に、世界市場で現地生産比率と現地調達率の引き上げをさらに進めるとスタンダード&プアーズはみている。
日産も現地生産比率は比較的高い。たとえば米国での現地生産比率は2002年3月期には66%だったが、2003年にキャントン工場が稼動を開始したことなどから、ここ数年間で70−80%まで上昇してきた。仮に円高傾向が定着し2010年3月期と2011年3月期も収益への大きなマイナス要因となる場合には、為替の影響を低減するために、日産が車両やエンジンの製造の海外移転をさらに進めることも十分に考えられるだろう。