自動車業界、急ブレーキ後はしばらく徐行運転が続く《スタンダード&プアーズの業界展望》
米国市場は、2009年の年間販売台数が970万台程度になると現時点ではみている。これは2008年の1,310万台から26%減の水準である。日本の上位メーカー3社(トヨタ、ホンダ、日産)の米国での合計市場シェアは2008年の12カ月間と2009年1−3月期はいずれも34.8%と、歴史的にもっとも高い水準にある。ハイブリッド車に代表される燃費効率の高さは日本の自動車メーカーの強みであり、北米市場での新車販売を今後も下支えするとみられるが、少なくとも2009年中は市場低迷から影響を受けることになろう。
一方、欧州市場での日本の自動車メーカーの販売台数や市場シェアはそれほど大きくない。欧州全域での2008年の乗用車の新車登録台数は、前年比7.8%減の1,470万台だった。日本メーカーのなかでもっとも高いシェアを持つトヨタは、市場シェアを2007年の5.8%から2008年には5.5%へ落としている。「スクラップ・インセンティブ」(車齢の高い車から低燃費の新車への買い替えに対する消費者への廃車・代替奨励金制度)を導入したドイツなどでは新車販売が大きく伸びているが、永続的な施策ではないため、2009年の全体需要は引き続き弱含むとみている。
かつては北米市場からの収益に大きく依存してきた日本の自動車メーカーだが、近年は新興市場の収益貢献度が急速に上昇した。たとえば、長年にわたり日本の上位3社のなかでもっとも高い北米依存度を示していたホンダでも、日本、北米、欧州の3地域以外からの営業利益が連結営業利益に占める割合は2006年3月期の14%、2007年3月期の17%から、2008年3月期には27%まで上昇した。しかし足もとの自動車市場低迷は世界的に広がっており、振興市場にも先進国市場の落ち込みを補うような勢いはない。