米国の保護主義化が世界の保護主義化をもたらす
なお、バイ・アメリカン条項というのは初めて制定されたものではない。大恐慌当時に制定された「1933年バイ・アメリカン法(Buy American Act of 1933)」があり、この法律は今でも稼動しており、この法律に基づき各州においても同様のバイ・アメリカン法が制定されているのだ。今でもこれらの法律に基づき米国産品・州産品優遇を政府調達の基本方針としているのだ。すでに「バイ・アメリカン」はあるのである。
アメリカに追従する国が出る可能性
オバマ大統領とクリントン国務長官は、大統領(予備)選挙の中でも保護貿易主義的な発言をしていた。例えば、NAFTA(北米自由貿易協定)の見直しは両者とも主張している。米民主党は労働組合を支持基盤に持っており、アメリカの雇用を守るという観点から保護主義的な発言が行われている。
今回のバイ・アメリカン条項が、実際の影響は小さいとしても、これは、戦前の大恐慌の原因となった関税引き上げ法「スムート・ホーレイ法(1930年)」をイメージさせる。
大統領が選挙中に保護主義的な発言を行い、実際に法律が成立し、アメリカが保護主義的なメッセージを世界に発信したことは世界の通商に大きな影響を及ぼすと懸念される。実際にドイツやフランスなどは国内の自動車産業への支援策を公表し、アジア諸国も自国製品の購入促進策を発表している。
また、今後の成長が期待できるBRICSにおいても、ロシアは自動車だけでなく液晶・プラズマテレビの輸入関税引き上げを検討している。
インドは鉄鋼製品の関税を引き上げ(0%→10%)、鉄鋼製品や自動車など輸入ライセンス制度を導入した。中国は輸出増値税還付率引き上げるとともに食料品など輸入禁止品目を増やしている。
そして、途上国においても、インドネシアは電気製品、衣類などの輸入業者登録を義務付け、これらの製品の輸入は指定された空港に限定した。タイは自動車などの一般関税を引き上げている。報道によるとベトナムは、繊維、靴、電子・コンピュータ部品などの輸出促進補助金を開始した。