米国の保護主義化が世界の保護主義化をもたらす
米下院は1月28日に米国製鉄鋼の購入を義務付ける「バイ・アメリカ鉄鋼条項」を含む「2009年アメリカ復興・再投資法(Recovery and Reinvestment Act of 2009)」を承認した。米国鉄鋼企業の鉄鋼出荷額は2008年11月には前年同期比39.9%減、前月比で25.8%減に落ち込んでいた。
これにより8250億ドルのアメリカ復興・再投資法に基づき予算を提供される公共事業(幹線道路や鉄道などインフラ計画に約900億ドル=約9兆円)では、さまざまな条件が付与されるが、原則的に”米国製の鉄鋼の使用が義務化”される。
昨年、法案がアメリカ連邦議会に提出されたことに対して、日本や欧州諸国からバイ・アメリカンへの批判が行われ、2月3日にオバマ大統領は「貿易紛争は起こしたくない」と発言しこれを収め、本法は2月17日に成立した。
日本には適応されないが、BRICSへ大きな影響
バイ・アメリカンといってもさまざまな条件が賦されている。WTO政府調達協定や米国と自由貿易協定を結び米国が政府調達市場アクセスの改善を約束している国は、このバイ・アメリカン条項は適応されない。つまり日本には適応されないことになる。
しかしながら、中国、インド、ブラジル、ロシアなどBRICS諸国はWTO政府調達協定に未加盟であり、また、米国とFTAを結んでいないため、このバイ・アメリカン条項の適用を受けることになる。
中国、インド、ブラジルなどは大きな鉄鋼生産国であり、これらの国々では鉄鋼業が大きな打撃を受けることが考えられる。ブラジルはWTOに提訴するかもしれない。