FTを買った日経の「目指す方向」が見えてきた 高すぎる買い物と決めつけるのは、まだ早い

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しかし、昨年末から今年年頭にかけて、次第に将来図が見えてきた。

日経に挟みこまれたFTの紙面

12月中旬、東京近辺の日経購読者にFTが挟み込まれた日経が届けられた。ピンク色の紙面にはバーバー編集長の挨拶文や記事の一部が日本語で掲載されていた。日経新聞にFTが「顔を出した」かのようであった。

年明けの1月12日、日経とFTの共同取材による日本特集の数ページがFTに挟み込まれた。同じ記事は日本語で日経にも載っていた。

18日には、日経とFTの両紙に安倍首相へのインタビュー記事が掲載された。FTの1面と中面に掲載されたインタビュー記事は、もしFTが日経の傘下になければ、この時点で実現できていなかったかもしれない。FTは日経をてこにして、日本の首相に直接取材する機会を持つことができたわけだ。

首相側からすれば、日経というパイプを通して、FTで大きく扱われる機会を得られたとも言える。FTに出れば、その声は世界中の知識人、政策決定者に届く。日本にとっては、FTは世界にその声を届ける窓口になる。

編集面での協力を深化

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日経とFTとの間では今後も編集面での協力が続くという。

すでに経営幹部及び記者レベルでの交流が進んでおり、日経の記者がFTで、FTの記者が日経で勤務しながら学ぶプログラムも始まっているようだ。互いに刺激を受ける部分が相当、あるのではないか。

日経によるFTグループ買収が「高すぎたかどうか」の判断は、まだ分からないのではないか。

欧州、米国などの海外市場に販路を広げるFTと、日本や他のアジア諸国が中心の日経とは、互いに補完する関係になれる。

今後も二つの新聞の協力が続き、これが紙面に反映される日々が普通になっていくとき、日本の主要大手紙から羨望の声さえ出るようになるかもしれない。
 

小林 恭子 在英ジャーナリスト

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こばやし・ぎんこ / Ginko Kobayashi

成城大学文芸学部芸術学科(映画専攻)を卒業後、アメリカの投資銀行ファースト・ボストン(現クレディ・スイス)勤務を経て、読売新聞の英字日刊紙デイリー・ヨミウリ紙(現ジャパン・ニューズ紙)の記者となる。2002年、渡英。英国のメディアをジャーナリズムの観点からウォッチングするブログ「英国メディア・ウオッチ」を運営しながら、業界紙、雑誌などにメディア記事を執筆。著書に『英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱』。

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