台湾は中国とどう付き合っていくのか 理想と現実の間には大きなギャップ
経済面における蔡氏の課題は、サービス貿易協定の批准と、それに続く物品貿易協定交渉に関する問題である。前者はすでに中国と合意済みだが、協定に否定的だった民進党政権としては、すんなりとは受け入れられない。
そのため今後は、「両岸協議監督条例」の制定を目指すだろう。中国との協定や合意の中身と手続きを監督できるようにするもので、中国に一方的に有利な内容にならないようにするためだ。蔡氏はこの条例の早期成立に注力するとみられる。
中国に対するスタンスは不透明
同時に、協定の見直しや見直すための協議に、中国が応じるかという問題がある。台湾との関係で中国が大前提としている、「92年コンセンサス」を、民進党はそもそも認めていない。「中国は一つだが、その意味は中国と台湾がそれぞれ解釈する」というものだが、民進党はこのコンセンサスの存在にどう折り合いをつけて中国と向き合うのか、はっきりしない。
さらに問題なのは、就任する5月20日まで約4カ月の時間があることだ。行政院では、すでに毛治国院長(首相に当たる)はじめ、閣僚が総辞職した。馬総統は、「議会で多数を取った政党が行政院長を指名して組閣すべき」と、選挙前から民進党と協力する意向を示してきたが、民進党はこれを拒否した。就任までの空白期をどう埋めるか。もし民進党側が問題を生じさせるようなことがあれば、就任前から蔡氏の運営能力に疑問符がつくことになる。
「台湾は台湾、中国とは違う」。多くの台湾人の理想が示された。だが、理想と現実の間に、大きなギャップが横たわる。中国の存在と、人民の生活に直結する経済問題を、いかに解決していくか。蔡氏の手腕が問われる。
(「週刊東洋経済」2016年1月30日号<25日発売>「核心リポート03」を転載)
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