仙台・不動産市況--新築空室率52%! 東京資本が演出したクレーン林立の“悲劇”《不動産危機》
08年以降、完工ないし建築中の大型ビルは、仙台駅西口の青葉通、広瀬通、東二番丁通(国道4号線)沿いに多い。着工は、まだ景気のいい07~08年初めだった。ここまでの急激な景気悪化は予期できなかったということだろう。
「基本的には、東京中央資本と外資に荒らされた格好。バブルが全国を回り回って仙台に来て、遅れて崩壊した」(現地業界関係者)。新築ビルの建築主を見ると、東京の大手不動産会社の名前が目立つ。新たな開発の新天地として仙台へ乗り込んできたが、タイミングが悪すぎた。
新規供給の「ダメ押し」とも言われるのが、森トラストが来年春の完成を目指す「仙台トラストシティ」。高級ホテルのウェスティンを上層とするオフィス棟と住宅棟から成り、住宅棟以外の総延べ床面積は3・8万坪。オフィスだけでも1・2万坪を超す。国道を挟み対峙するのは、仙台国際ホテルとオフィスビル。過剰供給を象徴するような構図だ。
市内では必然的にテナントの誘致合戦が激化している。「需要は増えないんだから、結局は引っ張り合い。目の前のビルのテナントにも営業をかけている状態」(業界関係者)。まさに仁義なき戦いだ。今後は賃料低下も見込まれるが、空室率は来年20%突破が必至ともいわれる。
着工前や構想段階の案件は、多くが凍結を余儀なくされている。仙台駅西口から徒歩約5分の広瀬通沿いに広い空き地がある。東証1部上場のデベロッパー、サンシティが07年3月に取得した土地だ。あおぞら銀行など9金融機関が計69億円の抵当権を設定している。当初はホテル建設の話があったが、今は計画白紙という。サンシティには継続企業の前提に疑義の注記がついている。
また、広瀬通と晩翠通の交わる角地は東京の新興デベロッパー、アー・スリーが07年6月に買収し、サンシティが買う予定だったが、昨年10月にアー社が倒産。債権者のオリックスが差し押さえ、競売開始が決まっている。こうした「バブル崩壊の象徴」ともいえるサラ地も市内あちこちに点在している。