仙台・不動産市況--新築空室率52%! 東京資本が演出したクレーン林立の“悲劇”《不動産危機》

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仙台・不動産市況--新築空室率52%! 東京資本が演出したクレーン林立の“悲劇”《不動産危機》

杜の都・仙台は東北地方では独り勝ちと言われてきた最大都市である。昨年の公示地価では、仙台駅前の前年比上昇率が40%で全国一となった。1平方メートル当たり325万円で、バブル絶頂期だった1991年の1350万円には遠く及ばないが、2005年の底値171万円からは倍近くに反騰していた。

ところがだ。最近の不動産市況を見ると、仙台の悪化ぶりはひどい。先日発表された今年の公示地価では、仙台市中心部の地点は軒並み2割近く急落した。地方圏・商業地の地価下落率上位10のうち9地点を仙台が“独占”している。

また、不動産仲介大手の三鬼商事の調べでは、今年2月の仙台市中心部オフィスビルの平均空室率は14・06%を記録。全国主要都市の中でも飛び抜けて高い。9%台だった1年前ごろから悪化が目立ち始め、昨年9月以降、加速した。新築ビルに限れば、空室率は実に52%台。いったい、どういう状況なのか。

「需要は増えないから結局は引っ張り合い」

仙台駅西口に降り立つと、すぐに右手の高層ビル群が目に入る。低層階にパルコが入居するビルが、昨年8月竣工の仙台マークワン。11~19階のオフィスフロアの案内版を見ると、14、15、17階はテナントなし。夕方、ビルを眺めても、明かりはまばらだ。駅直結という立地抜群の新築ビルでさえこの状態である。

駅周辺を歩けば、ピカピカの新築ビルやクレーンを載せた建築中のビルの多さに気がつく。一瞬、好景気かと見まごうほどだ。仲介大手・シービー・リチャードエリスによれば、仙台主要エリアの新規オフィス供給量は08年に2・2万坪強で過去最高水準となった。03年以降5年間の供給量の約2倍。08年の新規需要量の約8倍で、この巨大な需給ギャップが空室率を急騰させたのだ。

しかも、09年の新規供給量も08年と同水準が続く。一方の需要はテナント撤退で減少必至。仙台の景気も日増しに悪化しており、やはり供給過剰に苦しむタクシーの運転手は「3月は普通なら期末で忙しい月だが、今年は2月より悪い」と嘆く。

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