新興デベロッパーになお続く「重大局面」、金融機関の支援継続の正念場《不動産危機》

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 このうちアゼルは3月30日午前8時30分に破産申告を申請した。理由は「3月期末の運転資金調達が不調に終わった」(IR担当者)ためだ。同社は旧日栄建設工業。マンション開発と建設事業の両輪経営で、当座比率もプロパストと同じ5・2%と、資金繰りは厳しい状況にあった。運転資金は実質大株主のファンド依存だったが、マンション事業の不振から、棚卸資産評価損を計上、第2四半期末に09年3月期の業績予想を大幅赤字に修正した。

このため、主力銀行(りそな銀行、横浜銀行)を中心とした過去のシンジケートローンの財務制限条項に抵触、継続企業の疑義が付いた。この継続疑義を外すと同時に、3月期末の資金調達のために、レジャー産業として兼営してきたパチンコホール(4カ所)の売却を計画。遊技場経営の「パラッツォ東京プラザ」との間で大田区内の2カ所のホールの売却交渉を行ってきたが、パラッツォが東京スター銀行からの資金調達に失敗したため、アゼル側に27億円の取り立て不能が発生。期末に控える約定返済等ができなくなった。この間も、資産売却で時間を稼いできた結果、「事業を継続できる資産も乏しく破産に至った」(同)と言う。

プロパストも3月31日に第3四半期決算を発表したが、監査法人の「意見表明」が付かず、同日付けでジャスダック市場の監理銘柄(審査中)に移された。取引所は「株券上場廃止基準に該当するかどうかを審査しており、決定までの日数は明確にできない」(広報担当者)と言う。同社がリリースした監査法人の四半期レビュー報告書によると「会社より提示された経営計画等の合理性について十分な心証を得ることができなかった」とあり、経営実態の厳しさが伝わる。

同社は当初、マンションデベロッパーからスタートしたが05年頃から不動産流動化事業で急成長し、06年12月に株式を公開した。08年5月期には過去最高益を達成したが、不動産市場の局面が暗転。9月のリーマンショックも追い打ちをかけた。レバレッジを利かせた経営で、棚卸資産と借入金が積み上がり資金繰りの逼迫も時間の問題だった。

年が明けると、予定していた第2四半期決算が監査法人との調整不調で発表できず、監査法人を新日本監査法人から明誠監査法人に変更。遅延した第2四半期業績では棚卸資産評価損170億円を計上、通期予想を大幅赤字に修正した。金融機関に対する支払い条件の緩和要請や08年5月期の法人税等の一部未払いにより継続企業の疑義が付いた。

現在、「新規プロジェクトを停止し、既存プロジェクト50本の早期売却を進めている」(矢野義晃経営企画部長)。が、第3四半期末で長・短借入金は852億円ある。返済のために、棚卸資産を第2四半期末から267億円圧縮して993億円にしたが、依然、資金回収状況は予断を許さない。

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