複写機各社が攻め込む7兆円印刷市場、キヤノン、リコー、ゼロックス…大手が激突!
従来機に画質で見劣りも 収益性確保にも課題
かつてオフィス内に数台置かれる程度だった複写機、プリンタなどの事務機は、カラー化、複合機能化(スキャナー、ファクス等の機能を搭載した多機能化)といった技術革新により、急速に台数を伸ばしてきた。特にデジタル化以降は、複写機(およびプリンタ)がネットワークでつながれ、単なるコピー機から、パソコン上のデータ出力機としてその用途を広げた。
だが、そうした技術革新が一段落したこともあり、05年前後からは先進各国で需要が一巡。ビジネス機械・情報システム産業協会によると、08年の世界複写機出荷金額は3・9%減。景気後退の影響が本格化する09年は2期連続のマイナス成長が確実だ。「今後はオフィス用だけでは成長は望めない。新たな市場への進出は不可欠だ」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ・児玉篤常務取締役)。おひざ元の市場尻すぼみが、新市場開拓を迫っている。
だがこれら百戦錬磨の事務機メーカーにとっても、避けては通れない高い壁がまだ残っている。
「これでは使い物にならない」
全国で写真プリント事業を展開するある会社は、顧客の写真をポストカードやアルバムに加工する事業用に、日系メーカーの機械を購入した。ショールームではきれいに刷れたのだが、実際に現場で使うと、画質の見劣りが明らかだった。
デジタル商業印刷機が印字に使うのは事務機と同じく、トナーと呼ばれる粉末。粒子の大きさは直径5マイクロメートル程度と、オフセット機で使うインクに比べ10倍近い大きさだ。そのため、技術的にオフセット機と同等の高精細な画像表現は難しい。
「一般の人が見たら気付かない程度の差でも、プロの印刷業者の目は違う」と日本印刷産業連合会の高橋靖明氏が言うとおり、オフセット機とのわずかな画質の差が、受注合戦では致命傷になる。
もう一つの課題が、収益性の確保だ。日系メーカー各社が販売するのは、本体価格が500万円程度の低価格機が中心。だが、先行する外資系メーカーが手掛ける高級機種と比べると、収益源であるトナーなど消耗品で稼げる量が段違いに少ない。