複写機各社が攻め込む7兆円印刷市場、キヤノン、リコー、ゼロックス…大手が激突!
米国で先行して普及 低価格機種で追う国内勢
たとえば、半導体製造装置メーカーの東京精密の場合。昨年末合計5000万円を投じてキヤノン製のデジタル商業印刷機を購入した。これにより、オフセット印刷機の印刷会社に発注していたカタログ製作費は、年間1億円弱から2000万円ほどに圧縮できる見込みという。オフセット機とデジタル商業印刷機の併用を計画する印刷会社はもちろん、東京精密のようにカタログなどを内製する企業の需要も、事務機メーカーは取り込んでいく算段だ。
もう一つの強みが、バリアブル印刷。性別、年齢、住所など顧客の属性に合わせて、1件1件その印刷内容を変える方式である。日本ではまだ普及し始めた段階だが、一部で利用が始まっている。
「ETCマイレージサービス」「中国へ行くなら銀聯カード」--。三井住友カードは、2005年3月から富士ゼロックス製の印刷機を導入し、クレジットカードの明細書に地域、性別など顧客データに合わせた各種サービス、キャンペーンの案内を入れている。
こうした手法は、版を作って同一の内容を大量に刷るオフセット印刷機では、物理的に不可能だった。これこそデジタル商業印刷機ならではの領域だ。米国では自動車、金融、不動産など富裕層向けの分野を中心に、かなりの量のDMがバリアブル印刷に置き換わった。日本でも今後、DM、カタログ、チラシなど販促ツールとしての普及が期待されている。
「7兆円の印刷市場の1割がデジタル商業印刷機に換わるだけでも、市場は巨大。乗り出さないわけにはいかない」(リコー・プロダクションプリンティング事業部の片山利昭副事業部長)。オフィス用を手掛けてきた他社も胸中は同じ。今や事務機メーカー間の覇権争いは激しさを増す一方だ。
これまでデジタル商業印刷機の市場をリードし圧倒的シェアを誇ってきたのは、ゼロックスグループ。1992年参入の最古参で、1台数千万円する大出力のモノクロ機では、世界で6割超のシェアを握る。
対する後発組は、機能を絞り、印刷速度も抑えた低価格機種が中心だ。04年参入のコニカミノルタホールディングスは、本体1台400万円からの格安製品で台数を伸ばし、昨年は成長市場であるカラー機の分野で過半のシェアを獲得した。08年参入のリコーも同じく低価格機種、06年に参入したキヤノンは高級機と低価格機の中間の機種に強い。
従来、オフィス用事務機ではキヤノン、リコー、ゼロックスグループが世界3強だった。しかしこの新市場での勝敗いかんで、勢力図は大きく塗り替えられる可能性もある。
デジタル商業印刷機が脚光を浴びる背景には、従来の事務機器の需要飽和という状況がある。