深刻化する周産期医療、愛育病院の指定返上騒動で浮き彫りに

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深刻化する周産期医療、愛育病院の指定返上騒動で浮き彫りに

愛育病院は3月下旬、「総合周産期母子医療センター」の指定返上を東京都に申し出た。総合センターは、飛び込みや容体急変などハイリスク出産を24時間365日受け入れるセーフティネット。愛育病院は港区など五つの区を受け持っている。

皇室とのゆかりが深い愛育病院は、秋篠宮妃紀子さまが出産したことでも知られる。設備の整った名門だが、3月中旬に医師の勤務条件について三田労働基準監督署から是正勧告を受けた。労働基準法に基づく労使協定を結ばず、超過勤務が行われていた。

実際、メインの夜間勤務が可能な勤務医は5人で、1回16時間の当直勤務をこなすと「超過勤務は月44時間まで」と定める国の基準を上回る。是正勧告に応じるには医師の労働時間を減らす必要があり、総合センターの態勢が確保できないと判断した。中林正雄院長は「全国の総合センターに対し、月60時間程度の超過勤務を認めるのが現実的」と訴える。都の「周産期医療協議会」のメンバーも務める中林院長の発言力は大きく、今後の周産期医療のあり方を左右する可能性もある。

医師の確保に懸命

産科医不足は今に始まった問題ではない。中でも総合センターの産科医は激務を強いられる。20代の産科医の5割以上は女性が占めるため、出産などで一時的に夜間勤務ができなくなるケースも多い。

昨年10月、総合センターの墨東病院(墨田区)で起きた、いわゆる妊婦たらい回しも産科医の大量欠員が原因だった。指定返上の話が出たが、墨東病院がなくなれば都の東部地区は壊滅状態に陥る。地元の要請もあり、何とかセンターを継続している。

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