なぜ潜水艦では、カレーが好まれるのか? 知られざる潜水艦乗りの生活に迫る<前編>
午前の課業が終了すると昼食です。「潜水艦での昼食」というより「海上自衛隊の食事」というと、いわゆる「金曜定食」――カレーを思われる方が多いのではないでしょうか。海上自衛隊の各艦は、それぞれ独自の味のカレーを持っています。金曜定食というのは、週休2日制が導入されてからの言葉で、もともとは「土曜定食」でした。
土曜日はいわゆる「半ドン」で、乗組員は昼食後に上陸が許可されます。すると、中にはいろいろな理由から昼食をパスする者が出てきます。もし「数物(かずもの)」――たとえば、サンマの塩焼きだと乗組員の人数分を用意しなければなりません。
しかし、昼食をパスする者がいると、その分が残飯になってしまうので、できるだけ無駄が出ないように、融通の利くカレーがよく準備されました。カレーであれば、残っても当直員の夜食にカレーピラフなどにして再利用が可能です。もっとも現在は、メタボ対策のためなのか、夜食はなくなったようです。
この1日4回、あるいは3回の食事を準備するのが「給養員」と呼ばれる海曹士です。艦内では「調理員」と呼び習わすことのほうが多いようです。潜水艦では「食べることが唯一の楽しみ」と言われることもあるように、食事は乗組員の大きな楽しみのひとつです。もし、あまりおいしくない食事が出されると、やはり士気が落ちてきます。
潜水艦の食事のメニューは、定係港を所轄している地方総監部の栄養士が立てた「標準献立」に基づいています。この標準献立に「かれいの唐揚げ」があった場合、給養員は残り物の野菜を工面して「あん」をつくって出してくれます。このような給養員のちょっとしたひと手間が、乗組員の士気を維持し、高めているのです。
涙ぐましい食料品の備蓄テクニック
潜水艦の食事でいちばん苦労するのが、生鮮野菜の確保です。食料品の保存方法は、格段の進歩を遂げてきましが、それでも生鮮野菜の保存は難しく、長期の行動になると冷凍のミックスベジタブルなどに頼らなければなりません。
レタスやキャベツは、いつも同じところが当たっているとそこから傷むようですが、給養員達は、食事の準備でいろいろな素材を取りに来たついでにレタスやキャベツの位置を少しずつずらして、少しでも傷まないように、1日でも長く生鮮野菜を食卓に上らせることができるように、人目にはつかない努力をしてくれています。
食料品の保管でひとつ、ご紹介しましょう。タマネギやジャガイモのような、日持ちのする食料品を「貯糧品」と呼んでいます。潜水艦では、この貯糧品を格納するため、狭い艦内を有効活用して、一般の方にはちょっと想像できないような場所を使用しています。潜水艦を見学に来られた方の100人が100人、必ず「おっ、すごい!」と言ってくれます。
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