なぜ潜水艦では、カレーが好まれるのか? 知られざる潜水艦乗りの生活に迫る<前編>

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停泊中の潜水艦の1日は午前8時に始まります。艦内の当直員や特段の理由がある者を除く総員が、上甲板あるいは岸壁に整列し、航海科員の吹奏する「ラッパ君が代」が流れる中、後部旗竿に「自衛艦旗」が、前部旗竿には「国旗」が掲揚されます。

「自衛艦旗」掲揚中は挙手の敬礼

このとき自衛艦旗は、ラッパ君が代の吹奏が始まった瞬間に、それまできちんと畳んで、当直先任海曹の手に保持されていた旗が解き放たれます。すると、旗が海風にはためき、吹奏に合わせてゆっくりと掲揚されていき、君が代が終わる瞬間に全揚となります。これに対し、国旗はさっと全揚されます。自衛艦旗が掲揚されている間、乗組員は自衛艦旗に正対し、挙手の敬礼を行います。

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なお、自衛艦がたくさん停泊しているときは、「午前8時」といっても、それぞれの艦の間で微妙にズレが生じては困ります。その場合は、所在する先任者が乗艦する艦がメイン・マストに、定められた信号旗を掲揚し、その信号旗が降下された瞬間に合わせて、各艦が自衛艦旗を掲揚するようにしています。

ちなみに、横須賀の吉倉港(JR横須賀駅の裏側の港)では、海上自衛隊の艦艇が、米海軍と隣り合わせに停泊しています。自衛艦旗あるいは軍艦旗の掲揚時間はどちらも午前8時なのですが、海上自衛隊、米海軍はそれぞれの先任者が乗艦する艦の信号に合わせるので、ときどき日米で微妙にずれが生じることがあります。

また、米海軍の艦艇は外国の港に停泊しているので、第7艦隊旗艦「ブルーリッジ」が停泊しているときは、軍艦旗掲揚時、米国国歌に続いて日本の国歌が演奏されます。米海軍横須賀基地の日米共同使用区域に停泊する潜水艦は、この間、ずっと敬礼を続けます。自衛艦旗の掲揚、降下の指揮を執る当直士官は、米海軍の演奏に注意し、「かかれ」の号令の掛けどきを計っています。

自衛艦旗の掲揚が終わると「課業整列」になります。各分隊は整備を副長に報告し、まず副長から、その日の午前あるいは午後の日課が示されます。たとえば「午前の日課、整備作業」という風にです。そして、特段の注意事項がなければ「かかれ」の号令の後、各科ごとに午前、あるいは午後の作業について、細かな命令、指示が科長や分隊先任から達せられます。

もし、新着任者、あるいは退艦者がある場合は、自衛艦旗の掲揚後、課業整列の前に総員集合が行われ、幹部の場合には艦長から、海曹士の場合には副長から紹介があり、退艦者はその後、見送りが行われます。

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