ポイントカード作って損をする人・しない人の差 人々の目を容易にくらます「行動経済学」の罠

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人はなぜポイントカードを作ってしまうのか? (写真:CORA/PIXTA)
ついつい作ってしまうポイントカード。でも、ある事実を知らないと損をしてしまう可能性も……。私たちがどうしてもポイントカードを作り、ポイントを貯めてしまう理由を、マーケティング&ブランディングディレクターの橋本之克氏による新刊『9割の買い物は不要である 行動経済学でわかる「得する人・損する人」』より一部抜粋・再構成してお届けします。

ポイントを貯める理由は何かと聞かれれば、多くの人はお得だからと答えるでしょう。しかし、このポイントに関して、多くの人が勘違いをしています。

たとえば「ポイント10%還元」と「10%割引」を比較すると、どちらが得でしょう?

多くの人は「同じ10%だから、どちらも同じだけ得」と答えるのではないでしょうか。正解は「10%割引のほうが得」です。

なぜポイントよりも「割引」のほうが得か

わかりやすく、1万円払って買い物をしたと仮定します。

ポイント10%の場合、1000円分のポイントが加算されます。これを次回以降の買い物で使えば、お金を支払うことなく1000円分の商品を手に入れることができます。

この一連の買い物において、支払ったお金は1万円で、手元には1万1000円分の商品が残ります。1万1000円分の商品を買うにあたって、値引きされた金額は1000円ですから、割引率は1000円÷1万1000円=9.1%です。

一方、10%値引きの場合は、1万円分の商品が1000円値引きされますから、これを9000円支払って手に入れることになります。当然、割引率は10%になりますから、ポイント10%還元よりも得なのです。

ポイント還元に似たスタンプカードの場合も、まったく同じ勘違いが起こります。「10回通ってスタンプが10個貯まると1回無料」は「10%割引」と同じだけの得に思えるかもしれません。

では、具体例で考えましょう。1回あたり1000円のマッサージを想定します。10回通って1万円払うと次の1回分は無料です。つまり11回分のマッサージを1万円で受けられて1000円割引されたことになるので、割引率は1000円÷1万1000円=9.1%です。10%割引よりも割引率が低いのです。

このように、感覚と実態がずれるのは「10%」という共通の数字が示されていることが原因です。行動経済学における「フレーミング」の影響によるものです。これは同じ事柄でも、記述や表現の仕方によって、受け取られ方が異なってしまう心理的バイアスです。

今回の例のように、異なる内容が、提示の仕方で同じように受け取られるのもフレーミングの影響です。フレーミングは英語でいう「枠(フレーム)」に由来しており、まるで一定の枠を通して物事を見ているかのように、誤った解釈をしてしまうというものです。

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