「歩きスマホの突進」を放置するのは限界だ

「敵を知り己を知る」で危険回避できるか

江戸時代の偉人・二宮金治郎はまきを背負って歩きながら読書をしたと伝えられる。真偽は不明であるが、実話であれば、時間を惜しんで勉学したのであろう。現代人は、偉人でなくともたいてい時間を惜しむが、本や雑誌を読んで歩く者は少ない。時間が惜しいだけならば、歩きながらひげをそる者、化粧をする者など、さまざまな行動がありそうだが、そのような者はまずいない。そうすると、時間を惜しむことが原因ではなく、スマホ自体に何か、歩行中の利用を誘引する性質がありそうだ。

上記MMD研の報告に、歩きスマホの利用者が何をしているかのアンケートがある(重複回答あり)。上位は、1)メール39.7% 、2)通話29.2%、 3)乗り換え案内情報検索28.8% 、4)レストラン、ショップ等目的地の地図23.5% 、5)SNS/ブログの閲覧・投稿19.1%、6)ゲーム18.3%、7)チャット16.6%、8)ニュース/天気サイト閲覧14.9%、9)動画視聴5.0%、10)ネットショッピングサイト閲覧4.8%――などである。

スマホの機能は多様である。上記を大別すれば、1、2は特定者とのコミュニケーション、3、4は移動情報であるが、そのほか、娯楽、情報収集、不特定者とのコミュニケーションなどがある。

比率を見ると、特定者とのコミュニケーションと、移動情報が大きい。メール、通話については、これらを急いで処理したくなる人間心理があるだろう。歩行中にも操作したくなる原因と考えられる。また、地図ソフトを歩きながら利用したくなる事情は容易に理解できる。こう見ていくと、確かに、読書やひげそりに比べて、スマホを歩行中に利用したくなるのは自然なことと思えてくる。

小塚教授の視線計測が明らかにした危険性

物理的な利便性と面白いアプリの両面で、現代のスマホは魅力的だ。時間に追われて、やむをえず歩行中に操作するというより、魅力が大きいので、歩いている間も我慢できずに使ってしまうケースのほうが多いのであろう。位置情報を利用したゲームの大ヒットが、交通事故の原因として問題になった例もある。危ないと認識しつつもやってしまう特性は、スマホの強い「魅力」から生じる。いわゆる「スマホ中毒」を生むゆえんだ。

しかし、このことの危険度はどうだろうか。前述の小塚教授のスマホ利用者の視線の動きの研究がユニークだ。

その中の1つで、駅構内で旅行パンフレットを見ながら歩く場合と、スマホを見ながら歩く場合との、被験者の視線の動きを比較している。パンフレットの場合、電車の入り口や時刻表など、周囲にも目を配っているのに対し、スマホでは、視線が「くぎ付け」となり、周囲をほとんど見ていないことが判明した。前述の動画の渋谷の交差点の歩行実験では、視線が前方にもほとんど配られていない、危険な状況が明らかにされている。

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