「ラジオ」止まらぬ高齢化、若者呼び戻せるか スマホ・AIスピーカーで変わる音声メディア
「えー、メールが来ております。設楽さん、三村さん。こんばんは」「三村さん、いねーよっ!!」
東京・赤坂にあるTBSラジオのスタジオ。日付も変わった深夜の時間帯で、『JUNK バナナマンのバナナムーンGOLD』(毎週金曜)の生放送が行われていた。お笑いコンビ・バナナマンの設楽統さんがリスナーのとぼけたメールを読み上げ、コンビを組む日村勇紀さんが間髪入れずにツッコむという“茶番劇”がこの日も繰り広げられた。
2017年のテレビ番組出演本数ランキング1位を獲得し、「日本で最も忙しい芸能人」と呼ばれる設楽さんを擁するバナナマン。だが彼らが8年以上にわたって毎週深夜2時間の生放送を繰り広げているのは、テレビではなく「ラジオ」の冠番組である。
若者のラジオ離れと裏腹に意外な健闘
バナナマンの番組を放送するTBSラジオは、聴取率で首都圏トップを走る。2018年6月の首都圏聴取率調査(ビデオリサーチ調べ)によれば、TBSラジオ(0.9%、AM)、J-WAVE(0.7%、FM)、NACK5(0.6%、FM)、ニッポン放送(0.6%、AM)、TOKYO FM(0.5%、FM)、文化放送(0.5%、AM)という並びだ。一般的に、音質が担保されるFM局は音楽番組、AM局はトーク番組に強みを持っている。
そんなラジオの業界は決して安泰とはいえない状況だ。ラジオ全局個人聴取率は長らく6%台前後の水準を維持してきたが、2017年以降は5%台から抜け出せずにいる。
深刻なのが、「若者のラジオ離れ」だ。NHKの全国個人視聴率調査によれば、13~19歳の週間接触者率は1975年の66%から2015年にかけて13%へと低下。一方、60歳以上は37%から52%へと上昇。音楽を気軽に聴く手段が広がり、若者が離れたのだ。TBSラジオの強さの要因は、高齢リスナーを囲い込んでいることにある。
だが、ラジオ業界は“復権”の望みを捨てていない。大手広告代理店・電通の統計によれば、マスコミ4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)全体の広告費が3年連続で減少する中、ラジオ広告費だけは2年連続でわずかながらプラス成長と健闘を見せているのだ。一体何が起きているのか。
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