絶滅収容所の悲惨な記憶、厩でかいだ「生の匂い」 『アウシュヴィッツの小さな厩番』書評

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『アウシュヴィッツの小さな厩番(うまやばん)』ヘンリー・オースター、デクスター・フォード 著
アウシュヴィッツの小さな厩番(うまやばん)(ヘンリー・オースター、デクスター・フォード 著/大沢章子 訳/新潮社/2310円/304ページ)
[著者プロフィル]Henry Oster/1928年生まれ。アウシュヴィッツ、ビルケナウ、ブーヘンヴァルトの強制収容所を奇跡的に生き延びた。戦後、おじを頼って米国に渡り検眼士として働く。2011年、ケルンから強制移送された2011人のユダヤ人の最後の生き残りとして、70年ぶりにドイツを訪れた。19年に90歳で死去。

戦争の犠牲の重さを比較することはできない。そうとわかってはいても、先の大戦の犠牲の中でも、ホロコーストを特別に語るのは許されるだろう。その記憶の語りに、得がたい1冊が加わった。広く読まれることを願う。

残酷で悲惨な記憶に残る厩でかいだ「生の匂い」

本書の語り手オースターはドイツ・ケルン市の豊かなユダヤ人実業家の家に生まれた。受難の記憶は小学校入学の日に始まる。ユダヤ人の児童らは、下校時に迎えにきた親たちの前でナチスの青少年組織に石つぶてや棒で襲撃された。ヒトラーが政権を握った翌年、1934年のことだ。

次の年、一家は家を奪われて市内の貧困地区へと移り、父親は国境の要塞建設の労働に駆りだされる。没落と迫害の始まりだ。第2次世界大戦が始まって3年目のある秋の夜、親子3人は着のみ着のまま列車に押し込まれポーランド・ウーチのユダヤ人ゲットーへと強制移住させられた。

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