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ソ連が受け入れられる思想はベルジャーエフだ 佐藤優の情報術、91年ソ連クーデター事件簿81

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ロシア共産党第2書記のイリイン氏は筆者のほうを向いて「あなたと話した中では、ベルジャーエフの話が最も印象に残った。この思想ならば、ソ連でも受け入れ可能だと思った」と言った。

1991年5月にイリイン氏の要請に応えて、ベルジャーエフの自叙伝を用いてメモを作成し、こんな話をしたことを思い出した。

ロシアの思想家ベルジャーエフ

ロシアの思想家ニコライ・アレクサンドロビッチ・ベルジャーエフ(1874〜1948)は、ロシアでも欧米諸国や日本でもほとんど忘れられてしまった思想家だ。1930年代から60年代まで、欧米の思想界でベルジャーエフは、実存主義との絡みで語られることが多かった。しかしソ連との文脈で重要なのは、ベルジャーエフがロシア共産主義という現象の内在的論理を正確に捉えたことだ。

ベルジャーエフは1874年、ロシア帝国キエフ県のオブホヴォ村で生まれた。父親は貴族で軍人だった。その関係でベルジャーエフもキエフ陸軍幼年学校に入れられる。しかしベルジャーエフは職業軍人になることを望まず、キエフ大学に進学する。最初は自然学部に在学し、その後法学部に移る。卒業後はマルクス主義に通暁した知識人として有名になるが、マルクス主義の実践運動には参加しなかった。

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