「ラジオ」止まらぬ高齢化、若者呼び戻せるか スマホ・AIスピーカーで変わる音声メディア

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ラジオ広告費増加の要因の一つには、スマホの存在がある。2010年に始まった、ラジオをネット上で同時配信するサービス「radiko.jp(ラジコ・ドット・ジェーピー)」のスマホアプリの利用者数は近年着実に増えている。調査会社ニールセンによれば、直近2年間で4割近く伸び、今年6月時点では約550万人に達した。ただradiko社の坂谷温・業務推進室長は、「この数字に満足してはいない」という。スマホの普及度合いに比べると、利用者数を増やす余地はまだまだあるのだ。

そこでここ数年、従来のradikoにはなかった新機能の提供を始めている。月額350円で日本中のラジオ局を聴ける「エリアフリー」機能(2014年4月)や、オンエア後の番組を放送後1週間以内はいつでも無料で聴ける「タイムフリー」機能(2016年10月)だ。特にタイムフリーの開始以降は、減少傾向にあった利用者数が再び上昇トレンドに入った。

「radiko.jp」のアプリ画面。左から通常の地域内放送局の生放送、オンエア後の番組を聴ける「タイムフリー」、日本中のラジオ局を有料(月額350円)で聴ける「エリアフリー」(写真:radiko.jpアプリ画面をキャプチャ)

7月24日からは、これまでradiko社が蓄積してきた聴取ログやアプリ利用履歴、プレミアム会員データを生かし、リスナーの属性に合ったCMを流すターゲティング広告モデル「ラジコオーディオアド」の実証実験が始まった。radikoは全国のラジオ各局や電通、博報堂DYメディアパートナーズ、アサツーディ・ケイといった広告会社が出資しており、収益モデルが確立できればラジオ局も恩恵を受けられる。

スマートスピーカー登場が追い風に

「OKグーグル、J-WAVEをかけて」「はい、radikoからJ-WAVEをストリーミングします」

「グーグルホーム」などのスマートスピーカーでは、話しかけるだけでradikoをすぐ聴くことができる(撮影:今井康一)

radikoが聴けるのはスマホだけではない。ラジオ広告費が伸びたもう一つの要因でもあるのが、スマートスピーカーである。昨年10月に発売された「グーグルホーム」では、話しかけるだけで簡単に“チューニング”できる。日本ではスマートスピーカーの購入意向率が9.4%とまだ低いが(ビデオリサーチインタラクティブ社調べ)、今後普及が進めば、ラジオ各局にとっては間違いなく追い風となる。

実際、米アマゾンが展開するスピーカー「アマゾン・エコー」の日本における人気スキル(機能)を見ると、radikoがトップなのだ。前出のradiko社・坂谷氏によれば、「スマートスピーカーでよく聴かれているのは午前6~7時台という朝の身支度している時間帯。これはラジオ受信機が家庭にあった時代の聴かれ方だ。リビングルームにラジオが戻ってくるかもしれない」と期待する。

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