アフリカは「資本主義の限界」を見抜いている

日本人がアフリカ思想から学べることは多い

若林:銀行はあっても、そのサービスにアクセスできない人ばかりなので。モバイル送金サービスというのは一気に広まるわけですよ。日本はヤマト運輸が発達しているからドローンは必要ありませんが、アフリカは道路がないから、ドローンを飛ばす意味があると。日本だと、車の代わりになるオプション程度ですが、アフリカでは道路なくてもものが運べる。道路は中央集権的に編成されるものです、田中角栄が首相になって新潟に新幹線を通すのと一緒で、ケニアの大統領は、部族社会なので自分の村にまず高速道路を通します。

近代国家に必要なインフラはそういう形で編成されますが、デジタルテクノロジーが入ってくると、近代を飛ばしていきなり21世紀になる感じがあって、アフリカの面白いところの1つであると思います。

山田:吉川さん、フランシス・B・ニャムンジョ教授の「開発というまぼろしが、ウィッチクラフトの噂を広げているのだ」という論文について解説してください。

吉川:ウィッチクラフトを日本語で妖術と訳しますが、アフリカでは生活の中に十分残っています。それは、未開だからではなくて、むしろ開発が進んでいるからそこに回帰してきている部分もある。先ほど触れたように、アフリカには分有する文化がありますが、隣近所の人が理由もなく成功したり、共同体を顧みずに資本主義的な成功をしたときには、別の回路、つまり妖術で理解するんですね。こっそり妖術を使って成功したんだと。

ヨーロッパや日本の人は、アフリカは、西洋に追いつこうとして、資本主義や西洋の産業構造を再生産しようと頑張っている、と考えていたと思うんです。ところが、アフリカから見た場合はまったく違います。ニャムンジョが指摘するのは、資本主義は多くの人に成功を約束するけど、実際はほんの一握りの人しか成功しなくて、結局ほかの人は失望するしかない、ということ。

だから、それはうまくいっていることにはならないとね。資本主義の約束は長続きせず、成功も希有で、失敗も多い。日本ではそれを自己責任として済ませますが、そうやって1人だけで成功しても失敗しても、非常にきつい。だからニャムンジョは、アフリカのように共同体につねに自分の足場を置いておくのが資本主義に対抗するカギになるというんですね。

「オーガニックな成功」って何?

山田:アフリカには自己責任論的なものはないんでしょうか。

吉川:シェアすればいい、といったきれいごとで済まない、生々しい現場はあると思います。だからといって昔ながらの伝統は、死んでいる伝統ではない。何かを考えるときにアフリカの人はその思考パターンに戻って、考えをめぐらせるのではないでしょうか。

山田:『WIRED』で取材した6つの都市の中で、ラゴスでの印象的な言葉に「オーガニック」という表現がありました。どんな意味でしょう。

若林:とにかく「オーガニックなんですよ」と取材したスタッフが言っていました。それは成功に対するある種の考え方です。アフリカのミュージシャンがラゴスでどうステップアップしていくか? 国内にはあまり産業もないので、友達をとにかく集めて、徐々に大きくしていく。つまりそれがオーガニックです。その成長モデルしかなくて、延長線上にグローバルスケールの成功があるように思います。

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