北朝鮮の核開発は「戦艦大和」建造に似ている 戦前の日本を考えると経済制裁強化は不安だ

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戦前日本に考える「対北朝鮮」経済制裁の不安とは(撮影:梅谷秀司)
日本人はなぜあの戦争を止められなかったのか、あの戦争にいったいどれだけのカネがつぎ込まれたのか。
太平洋戦争に突入する前夜の日本、「戦艦大和」の建造計画を阻止するために山本五十六が海軍に招じ入れた若き天才数学者・櫂直を主人公にしたマンガ『アルキメデスの大戦』の作者・三田紀房さん。
山本五十六をダマして「水からガソリンを製造する」実証実験を霞が関の海軍省で行った詐欺師・本多維富を歴史の闇から発掘した歴史ノンフィクション『水を石油に変える人 山本五十六、不覚の一瞬』の著者、山本一生さん。
2017年8月、2人の異色対談が実現した。架空の天才と希代の詐欺師が照らし出す戦前昭和をのぞくと、現代の日本、そして北朝鮮問題が見えてくる――。

 

前編:国家予算の26%をつぎ込んだ「人造石油」計画

「英霊」を気にすると、戦争は簡単にはやめられない

ーーお2人にお聞きします。なぜ日本は太平洋戦争へと突入してしまったのでしょう。あの愚かな戦争は止められなかったのでしょうか。

三田紀房(以下、三田):戦争というものはすべて愚かなもので、愚かでない戦争はありません。それでもあえて「愚かな戦争」というのは、2度と戦争をしないための戒めとして、修辞が重なっても、戦争は愚かなものと言わなければならないと思っています。

太平洋戦争はアメリカとの対立が開戦原因と思っている方が多いかもしれませんが、当時の日本にとっては、太平洋戦争とは、日中戦争に勝利するための戦争なんです。日本は1937(昭和12)年から中国と泥沼の戦いを続けていました。

この戦いの根源は、日清・日露戦争にまでさかのぼります。当時、大陸の玄関口、日本の目と鼻の先にある朝鮮半島は最重要衝で、ここに清国やロシア帝国が影響力を及ぼすのは絶対に避けたい事態と考えられていました。日清戦争で朝鮮半島を勢力下に置くと、次は朝鮮半島の防衛には満州が重要となり、日露戦争が行われる。そして満州を得ると、満州防衛には中国が重要となる。もう切りがない。

朝鮮半島、満州までは世界列強各国も、日本の進出にまだ目をつぶっていましたが、中国となると話は別です。1930(昭和5)年、中国の総人口は4億5279万人といわれています。日本は6470万人で、アメリカは1億2363万人です。市場規模で考えた場合、中国に勝るものは存在しません。イギリスは3億5237万人の人口を持つインドを植民地として支配し、排他的なブロック経済で利益を独り占めしたうえ、1842年の南京条約で香港を永久割譲され、対中国貿易で巨万の利を得ていました。米国も1898年の米西戦争でフィリピンを得て、中国への進出準備を着々と整えていました。

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