江戸幕府が「鎖国」していたという大きなウソ

歴史研究よりも一歩早い「東大の日本史」

こういった情報をうまく利用し、幕府はイギリスとの通商を拒否した。かなりの交渉上手である。そう、「鎖国」下においても、日本は無知でも孤立していたわけでもなかった。こうした確かな情報収集に即した外交能力は幕末にも発揮されており、列強の言いなりのままに不平等条約を押しつけられたわけでは決してなかったのである。

近年、これらの史実をもって、歴史学では「開かれた鎖国」といった概念も提唱されている。

歴史研究の最先端を出題する「東大の日本史」

しかし、「『四つの口』なんて習ってないよ」「習っていないことは答えられるわけがない」と思うかもしれない。

実は、現行の教科書にも、これらのことははっきりとは書かれていない。しかし、隅々まで丁寧に読むと、その糸口がきちんと示されているのである。

最も多くの高校で採用され、東大の先生方も執筆に参加している『詳説日本史』(山川出版社)を例にとろう。ここではそもそも、「鎖国」の語を不用意に使っていない。「いわゆる鎖国の状態となり」(179ページ)と記し、先に述べた「鎖国」の語の由来について脚注で説明している。<鎖国=国を閉ざす>というイメージから解放されるべきことを読者である学生に求めているのだ。そして、「鎖国」という色眼鏡を外したとき、目に飛び込んでくるのは次のような記述である。

「貿易に関係している西国の大名が富強になるのを恐れて、貿易を幕府の統制下におこうとした」「こうして、鎖国によって幕府は貿易を独占することになり……幕府の統制力がいっそう強化された」「幕府は長崎を窓口としてヨーロッパの文物を輸入し、オランダ船の来航のたびにオランダ商館長が提出するオランダ風説書によって、海外の情報を知ることができた」(以上179~180ページ)

窓口を制限することで情報と貿易を独占し、幕藩体制の安定を図るという幕府の戦略が十分に読み取れる。不思議なことに、<鎖国=国を閉ざす>というイメージに囚われている限り、こうした記述には目が行かない。逆に、「鎖国」の語などないかのように授業で説明すると、生徒はきちんと理解できるのだ。

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