セイコーーエプソンは赤字の液晶ディスプレー事業縮小だが、業績安定には完全撤退など大ナタ必至
セイコーエプソンが2011年度までの中期経営計画を発表した。赤字が止まらない液晶ディスプレー事業を縮小し、今後3年間は収益改善を進める。06年3月期、07年3月期を中心に、ここ数年赤字事業の採算改善に追われていたエプソン。今期はようやくその改革にメドがつきつつあったが、世界的な景気後退でふたたび構造改革に追われる日々へと逆戻りとなりそうだ。
今回発表した中期経営計画で最もはっきりと打ち出されたのは、液晶ディスプレー事業を縮小する方針。同事業は全社売上高の17%弱(07年度実績)を占め、主力のプリンター事業に次ぐ第二の事業規模だった。一方、利益面では近年国内外の競合との価格競争が激化し、電子デバイス事業全体(水晶デバイス、半導体を含む)で07年3月期に260億円、08年3月期も171億円の営業損失を計上している。
こうした苦境が続くなかでも、将来性の見込めないMD−TFT方式、カラーSTN方式の縮小・撤退を進め、今09年3月期は80億円まで赤字を縮小させる計画だった。だが昨秋以降、携帯端末の生産、販売が大幅に縮小するなかで、中小型液晶の需要も急減。会社側の最新予想では、電子デバイス事業の赤字は220億円まで再拡大する見込みだ。
元の木阿弥へと戻ってしまったことで、エプソンはついに液晶ディスプレー事業を中核から外すことを決断。液晶パネル製造の機械設備のうち一部について、ソニーへの資産売却、譲渡を行う方向で交渉に入っていることを発表した。
現在エプソンは主流を占めるアモルファスTFT方式、高精細で技術的には将来性がある低温ポリシリコン方式などの2つの方式の液晶パネルを手掛ける。一方のソニーは後者のみを扱っており、エプソンの有する同方式の生産設備をソニーに譲渡する可能性が高い。ただ、「まだ交渉を始めた段階で、いつまとまるか、どれくらいの売却益が出るかなどについては未定」(セイコーエプソン ブランド・コミュニケーション推進部)という。
これにより、電子デバイスでは、今後は液晶ディスプレーに代わり、水晶デバイス事業を中核に据える方針。保有比率66.7%の子会社エプソントヨコムにTOBを実施し、早ければ6月1日にも完全子会社化する。トヨコムは今期、来期は赤字が予想されるものの、デジタル家電の需要が回復すれば再び安定収益が見込める予定で、従来少数株主利益として差し引かれていた利益を取り込むつもりだ。