小沢代表秘書逮捕はなぜ3月3日? 次の一手が国民の政権選択の判断材料に

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小沢代表秘書逮捕はなぜ3月3日? 次の一手が国民の政権選択の判断材料に

塩田潮

 小沢民主党代表の秘書の逮捕はなぜ3月3日だったのか。
 捜査の進み具合や証拠の保全、あるいは時効問題も絡んでいるのかもしれない。だが、政治的影響は甚大という認識は検察側にもあったはずだから、政治情勢をにらんだ上での逮捕だったのは間違いない。

 起訴前の被疑者の勾留は、勾留請求までの時間も含めて最長21日と決まっているから、3月24日までに検察の処分が下る。この時期の政治日程は、最重要課題の2009年度予算が2月27日に衆議院を通過し、30日後に自然成立する。麻生首相は「予算成立まで解散なし」と言い続けてきたが、裏を返せば予算成立後は解散の可能性ありということになる。2月27日以前の逮捕は、予算案の衆議院通過に影響を与え、勾留が自然成立後まで延びると、首相の解散の判断を拘束しかねない。だから、逮捕から勾留期間満了までを、2月27日以降、自然成立の3月28日の前に終えるというプランなのではないかと想像できる。

 検察の処分は、可能性としては起訴のほか、不起訴や起訴猶予、処分保留による釈放、別の容疑での再逮捕による勾留の継続もあり得る。起訴なら、容疑全面否定の小沢代表は辞任に追い込まれるだろう。
 一方、もし再逮捕・勾留継続となると、決着が予算成立後までずれ込むかもしれない。首相の解散権を束縛することになるからそれはないという説と、政治情勢よりも立件を優先させる検察は遠慮しないという二つの見方がある。

 いずれにしろ、自民党側でも疑惑政治家が取り沙汰されているため、一応の決着を見るまで、政治は停止状態が続く。もちろん事件の解明は重要だが、経済は落ち込み、国際情勢も緊迫する中で、政治の機能停止は深刻な事態だ。自民、民主両党とも、先に動けば傷が大きいという空気が支配的だが、どちらがどういう姿勢と方策で先に政治を動かすのか、国民はそこを次の政権選択の重要な判断材料にするつもりでいる。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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