物語コーポレーション、風評被害をはねのけ、食べ放題が絶好調。「焼き肉きんぐ」の強さとは?
通常、品質を引き上げ、さらにメニューの種類を増やすと原価は大幅に上昇してしまう。また、席に設置するタッチパネル端末にも費用がかかる。だが、同業態はコストをかけた分だけ、顧客の満足度も向上しているようだ。競争が厳しい中でも、客単価は3000円と高水準を誇る。家族連れを中心としたリピート客も年々増加しており、売り上げが伸びる好循環となっている。
「決して安くはないが、家族の祝い事など、さまざまな目的で利用されている」と加治社長。消費者のちょっとした「ハレ需要」をつかんでいるのも強みだろう。
こうした強さの背景にあるのは、同社のユニークな社風だ。たとえば新業態の開発。他社は数人の専門チームを組織して進めるケースが多いが、物語コーポレーションは「YTMS(よって、たかって、みんなで、する)」という文化がある。多くのメンバーが知恵を絞り、率直な意見を出し合いながら、業態を練り上げていく。多数決はせず、議論を尽くすのが同社のスタイル。焼き肉きんぐもこうした会議から生まれ、開発からわずか数年で営業利益の過半を稼ぎ出す主力業態に成長したのだ。
6月末に東京・町田市にオープンした新業態で、すしやしゃぶしゃぶの食べ放題「ゆず庵」をめぐっては、開発に約2年を費やした。「店名のアイデアだけで200個もあり、ひらがなか漢字にするかだけで5~6回会議が開かれたほど」(加治社長)という。