韓国企業は「身を切るリストラ」を迫られる 2016年は「緊縮経営」と「構造調整」の年

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専門家からは、手遅れになる前に構造調整を果敢に行い、業界再編を行うべきだと助言する。ムーディーズのクリス・パク理事は「韓国の経済規模を見ると、建設や化学など一部産業の企業数が多い。営業環境が悪化し、自ずと企業数を減らしていくのが競争力を高めるためによいだろう」と述べた。

構造調整の風は中小企業にとって、より冷たく吹きそうだ。金融当局は中小企業の信用リスク評価基準を厳格に適用すると発表した。市場で競争力を失ったが政府による支援と融資で延命している、いわゆる「ゾンビ企業」に対する構造調整を促していくという覚悟は、すでに表明している。

これは、中小企業だけではなく、大企業も同様だ。莫大な公的資金を投入したにもかかわらず競争力を確保できなければ、規模に関係なく整理する方針だ。金融監督院関係者は「中小企業の構造調整対象を選定する際に適用していた信用リスク評価基準を、2016年にも適用する方針。市中銀行が引当金をさらに積み増すという負担はあるが、経済危機に備えるという基本方針に変わりはない」と言う。

中小企業の評価基準が厳格化

金融監督院の信用評価基準もさらに厳しくなりそうだ。これまでの基準は3年連続赤字、インタレスト・カバレッジ・レシオ(営業利益と金融収益を足したものを支払利息で割った指標)が1未満、資産健全性が要注意の等級、が基準だった。

これを厳格化し、脆弱業種については3年連続赤字を2年連続にした。2015年末基準で金融監督院が構造調整対象に分類した中小企業は、2009年以来最多となる175社。これが世界的な金融危機が生じた2009年以来、最多となる。2014年には125社だった。

政府が主導する構造調整対象企業の中には、大企業も名を連ねる。金融監督院は中小企業とは違い、大企業に対する評価方法を変えなかった。とはいえ、政府と金融当局は基幹産業の競争力を高める方針であり、退出する大企業が相次いで出てくる可能性も排除できない。金融監督院は2015年6月に長期信用リスク評価を行い、大企業35社を構造調整対象とした。

また同年11月からは信用リスク評価を随時行い、今後も構造調整対象企業を追加する予定だ。これまで、2012年には36社、2013年40社、2014年34社を対象としてきた。金融監督院企業金融改善局関係者は「基準を変えなかったのは大企業に甘いから、と考えるのは間違いだ。毎年、債権銀行が大企業の構造調整手続きを実施しているのか評価し、改善計画の不履行があれば随時評価を行うなど、徹底した指導を行っている」と強調する。

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