日本株は1万4500円までの調整を意識せよ 米利上げ後は円安予想にはなりようがない

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このように、過去と同様の円高パターンになれば、輸出企業の収益は大幅に縮小し、株価への影響も避けられない。112円まで円高が進めば、日経平均株価は1万7000円割れを試すだろう。108円では1万6000円まで下落し、102円では1万4500円まで下げることになろう。日本株に対する円高のインパクトは、このようにきわめて大きいと考えておくべきである。ただし、1万4500円まで下げれば、ここが大底になる。この水準は、過去に何度もトライしている重要なフシ目だからだ。

一方の利上げはどうだろうか。FRBの見通しでは、来年は4回の利上げが実施されるということになっているが、利上げ回数がこれ以下にとどまるようだと、景気への不安が高まることになり、株価へのネガティブ要因になる。また原油相場についても、いままでは下落によるコスト低減がポジティブ要因として認識されてきたが、相場が下げすぎたことが、エネルギー企業の破綻リスクやハイイールド債の償還懸念に発展している。しかし、実際に原油相場が戻せば、今度は企業の生産コストの上昇や個人消費への悪影響がむしろ取りざたされることになる。

年明けには日銀の追加緩和や参院選への期待もむなしく、株価の戻りは限定的となるだろう。日銀の「補完措置」が市場を混乱させた経緯があり、次回の追加緩和はより大規模なものが求められる。しかし、米国が利上げモードに入る中、欧州と同様に積極的な緩和策を導入しづらい状況にあることは明白である。

円高圧力小さければ、年後半に上昇の可能性

「選挙は買い」との見方があるが、参院選では日本株は上昇していないという事実がある。選挙を株価上昇に生かすには、まずは衆院とのダブル選挙に持ち込み、「消費増税の棚上げ」を争点にするくらいでないと、インパクトはない。ただし、この点について安倍首相は「リーマン・ショック級の金融危機が起きない限り、消費増税は確実に実行する」と明言しており、株価への影響はやはり限られるだろう。

とはいえ、悪いことばかりでもない。円高が落ち着くと見られる5月末ごろから日本株は徐々に底打ち機運が高まり、反発に転じる可能性はある。円高圧力が小さければ、5月ごろまでに底値を確認し、年後半に掛けて最大で2万1500円程度までの上昇の可能性もみえてくる。しかし、想定通りに円高が進んでしまえば、2万円台回復もかなり厳しくなりそうだ。また2万円に近づくにつれて、戻り待ちの売りも出るだろう。その結果、今年の高値を越えることなく、上値の重い展開が1年間続く可能性も十分にある。

したがって、2016年は株価動向に過度な期待はせずに、最大1万4500円までの調整リスクを念頭に入れた上で、1万7500円近辺から買い下がる意識が必要だ。株価は日々変動し、それに合わせて投資戦略の変更が必要になる。常に柔軟に対応できるようにしておきたい。

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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