瀬戸際シャープ・奥田隆司社長を直撃 鴻海との提携、資金繰りは大丈夫か
経営危機にあるシャープ。主力の液晶パネル事業の不振などで2012年3月期は3760億円の最終赤字。今期も2500億円の最終赤字を見込む。有利子負債は6月末時点で1兆2000億円超、特に短期の資金調達手段であるコマーシャルペーパー(CP)の残高は約3600億円に積みあがった。CP償還で資金繰りはひっ迫している。
3月末に世界最大のEMS(電子機器製造請負)企業である台湾の鴻海精密工業との資本提携を発表したものの、鴻海グループからシャープ本体への出資はまだ行われていない。もともと来年3月末までの出資という約束だった上に、合意した1株550円からシャープの株価が大きく下げたため、出資条件を見直すことになったからだ。
主力取引銀行は金融支援の継続のためにも、鴻海からの早期出資を望んでいる。先週、台湾の経済団体の一員として鴻海の郭台銘(テリー・ゴウ)董事長が来日。8月30日には郭董事長の記者会見とシャープ首脳陣との会談が予定されていたが、郭董事長はどちらもドタキャンし、急きょ離日してしまった。
9月1日、東洋経済のインタビューに奥田隆司社長が応じた。
--8月30日に郭董事長と奥田社長が会談するはずでした。
郭董事長は、8月29日の夜遅く大阪に入った。30日の朝9時からミーティングをするはずでした。私と大西(徹夫・専務執行役員、経営管理担当兼経理本部長)と、オブザーバーに町田(勝彦・相談役)も参加していたが、郭さんから、「(宿泊していた)堺のリーガロイヤルホテルから出られない」という連絡があった。
当日予定していた堺市長との会談にも遅れてしまった。このままでは身動きが取れないので、30日のミーティングには参加できない。実務で打ち合わせした内容に基づいてディスカッションしましょうということでミーティングはスタートしました。
ところが、当日は、台湾の経済団体によるSDP(堺ディスプレイプロダクト=郭董事長が個人で出資)の訪問がある。そのため、実務部門が十分な時間が取れず、ミーティングは最終的な合意まで進まなかった。「あとで継続してやりましょう」となった。
--30日朝のミーティングは何時間くらいか。
午前中は2時間から2時間半、3時間弱ですね。
鴻海の関心は出資ではなくシャープとの事業シナジー
--論点は何だったのか。資本提携の条件見直しが浮上した8月初旬から、ここまで交渉が長引いている原因は何なのか。
3月27日に鴻海との戦略協業の契約締結をした。協業の中身は大きく2点。まずSDP、あるいは大型液晶事業を本体から切り離すということ。これはもう終わっている。もう1つが、鴻海によるシャープ本体への出資だ。