フェラーリが強気に値上げしても売れる理由 このブランディングは計算し尽くされている
それだけではない。2013年に発表され、今年になってデリバリーが始まっているハイブリッド・スポーツカーである「ラ フェラーリ」には1億6000万円というプライスタグが付けられながら、その限定数499台は即完売した。この499台という中途半端な数に疑問を持った読者もいるかもしれない。その理由を後ほど説明したい。
このような高付加価値ビジネスは作り手や売り手にとってまさにバラ色の環境だ。フツウの自動車メーカーが逆立ちしても出来ないような強気のビジネス構造をフェラーリが実現できるのはいったいなぜだろうか。もし、あなたがあこがれのフェラーリを買うことになったとして、訪れる光景から考えてみよう。
最新のV8ターボエンジンが搭載された最新モデルのフェラーリ488GTBがあなたのターゲットだ。白を基調にフェラーリ・レッドでコーディネイトされたディーラーで、セールスA氏と共にディスプレイに映るコンフィギュレーターを見ながら、クルマの仕様を決める。
その購入に至るプロセスも官能的だ
フェラーリ車は原則としてオーナーのリクエストによって外装色や内装のイメージなどを決定するというオーダーメイドによる受注生産システムを採っている。外装色は、やはり赤の“ロッソ・スクーデリア”で、インテリアはイタリアンスポーツカーらしい茶系の“クオイオ”というカラーを選ぶ。おっと、カーボンファイバー好きのあなたはカーボン製フロントウィングとリア・ディフューザーといった空力パーツというオプションも追加するのを忘れてはいけない。
税込で3070万円の488GTBもこういったオプションを追加し、税金などを加えていくとあっという間に4000万円を超えてしまう。そして、当然のことだがあなたは値引きなどというヤボなことは言わない。フェラーリは“買わせてもらう”ものなのだ。
総額の10%相当の手付金を支払って初めて、マラネッロ本社にあなたの488GTBのオーダーが入る。細かな仕様に合わせて多くはハンドメイドでクルマは作られていく。かつては納車まで2年などといわれた時期もあったが現在では3~4カ月で完成し、船便で日本へ到着、そして納車整備が行われる。
およそ7カ月後にあなたの“ロッソ・スクーデリア”色に輝く488GTBは納車される。その7か月の間にはあなたの発注した色に塗られたミニカーが丁寧なレターと共に本社から自宅に届く。そしてアッセンブリーラインの最後に置かれたカメラがあなたの488GTBの写真を撮影してクルマは完成だ。もちろん、“あなたのクルマが完成しました”という丁寧な手紙と共にその写真はあなたの手元に届く・・・。
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