北海道新幹線は「整備新幹線」の1路線として、東北(盛岡以北)、九州、北陸新幹線とともに工事が進んできた。本来の区間は新青森-札幌間の360.3km。今回の開業区間は、その4割に当たり、奥津軽いまべつ(青森県今別町)、木古内(北海道木古内町)、そして新函館北斗の3駅が新規開業する。2005年5月に着工し、総工費は約5500億円。終点・札幌への延伸は2031年春を予定している。
今回の開業は実質的に、JR東日本が主導した「東北新幹線の部分的延伸」と読み解ける。
列車ダイヤは、東北新幹線・東京-新青森間を走っている「はやぶさ」17往復のうち、10往復を道南まで引き延ばした形だ。「東京-新函館北斗間15~17往復」を想定し、経済効果などを試算してきた地元にとっては、開業前から大きな誤算が生じた。
東京-新青森間を「はやぶさ」が1日17往復している現状をみれば、函館市民の歯がゆさは察するに余りある。しかも、開業時に投入される新列車・H5系は、東北新幹線を走るE5系の改良版で、新造は4編成にとどまり、列車名も「はやぶさ」のままで津軽海峡を渡る。
需要少ない「末端部分」の宿命
地元に不満を残したダイヤだが、国土の構造を考えればやむを得ない面もある。北海道新幹線は東北新幹線と一体化した運用がなされ、東京-新函館北斗間は、距離的には東海道・山陽新幹線の東京-広島間や、山陽・九州新幹線の新大阪-鹿児島中央間に相当する。
しかし、沿線人口や産業集積を見れば、差異は一目瞭然だ。東北・北海道新幹線は首都圏から離れるほど旅客が減る「先細り型」の傾向が著しい。新函館北斗駅の後背地に当たる渡島・檜山地方は、18市町村を合わせた人口が47万人にすぎず、最大の函館市でも27万人を切る。
また、終点の道南地域と対岸の青森県が構成する青函圏は、津軽海峡を挟んで国・企業の出先機関の管轄も分かれるため、日常的なビジネス需要も多くはない。JR北海道の公表データから試算すると、2014年度の青函トンネルの輸送密度は1日1km当たり約3,900人。JR東日本のデータによれば、東北新幹線・八戸-新青森間の数字は同約1万人だ。
ただ、これらの事情を逆からみれば、「末端部分」の北海道新幹線の開業部分だけを取り上げて、存在意義や乗車率を論じることがどこまで妥当か、検討の余地は残る。完成まで16年を見込むとはいえ、本来の終着駅は札幌だ。九州新幹線も、新八代-鹿児島中央間の開業時点では、現在の利用状況は予測困難だった。
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