円高論は誤り、来年は1ドル135円に向かう

2016年は、さらに円安が進む

1995年から1999年にかけて当時のルービン財務長官が「強いドル政策」を堅持できた理由を思い出すべきである。当時、ドル高でも失業率が下がり続けたことが、ドル高許容力の源泉だった。現在の状況は当時によく似ている。そもそも、政策金利を引き上げる国の政府が通貨高けん制、というのも筋が通らない。もし米国当局がドル高を本当に止めたいのであれば、FRB(米国連邦準備制度理事会)が利上げを中止するのが先決である。そのような事態は米国景気がよほど悪化しない限り想定しにくい。

逆に、日本政府が「円安=物価高」を避けたがるとの説もある。確かに、日銀が積極的に動きすぎると「輸入物価上昇で国民生活を苦しめる政策」と批判されるリスクはある。しかし、米国の利上げがドル高・円安につながるのであれば話は違う。しかも、原油安によってガソリン価格も上がりにくくなっている。政府・日銀が1ドル=130〜135円程度の円安を阻止することはなかろう。

現地生産進み、自動調節機能が働きにくくなった

最後に、「それにしても、直観的にこれ以上の円安はおかしいのではないか」との議論について。筆者も、ニューヨークに出張するたびに、米国の物価がどんどん割高になっていくことを感じる。これは1ドル=105円前後とされる購買力平価から、明らかに円安・ドル高に乖離しているからこその現象である。円が「割安すぎる」のは事実だろう。海外投資家に円売りを躊躇させるという一定の円安抑止効果はあるかもしれない。

しかし、マクロ経済学の教科書が描いているような、「自動調節機能」はすぐに働くわけではない。1980年代の自動車を皮切りに、最近では家電製品まで、日本のモノづくりはことごとく海外シフトが進捗した。「現地生産」という教科書が想定していなかった事態が定着したいま、いくら円が割安だといっても、輸出数量の増加には直結しなくなっている。購買力平価のセオリーが成立するための根幹部分が揺らいでいるとさえ言えるかもしれない。

金利差、円需給そして政策スタンス。どこを見渡しても円高リスクは小さく、円安のポテンシャルは大きい。筆者は2016年のドル円レンジを120~135円と想定している。

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