資生堂は海外事業をどう活性化したのか?

フィッシャー氏も、外国人マネジャーを日本に転勤させるのは難しいことは承知している。そこで資生堂は、外国人を日本の本社に6カ月間勤務させるなど、さまざまな方法を用いてこの問題に取り組もうとしている。

多様性を高めるためのもう一つの取り組みは、女性の活用だ。資生堂は女性の雇用を拡大し、育児施設を充実させている。

女性を多数雇用するのは、一つには資生堂が女性を顧客として成り立っている企業だからだ。それに加えて、フィッシャー氏は、「女性はビジネスの課題について男性とは異なる視点を持つことがあり、新たなアイデアを得られる」と話す。資生堂は就職人気ランキングにおいて、男性よりも女性の間で高く評価されている。そのため、優秀な女性の卒業生を採用しやすい。

資生堂は子持ちの女性社員のために、「カンガルーム」と名付けた育児施設を提供しており(「カンガルー」と「ルーム」の合成語。カンガルーは子供をつねに連れ歩くことから名付けた)、育児の必要な従業員はいつでも利用することができる。

このほかにも、寛大な育児休暇制度があるうえ、夫が海外赴任する際には女性従業員が休暇を取ることができる制度も設けている。「資生堂は家族が離れ離れに暮らすことを強いたり、夫の海外赴任を理由に女性に離職を強いたりはしない」とフィッシャー氏は語る。

多くのキャリアウーマンは仕事と家庭の両方を志向しており、企業が優れた育児制度を提供している場合には、キャリアと子育てを両立させやすくなる。資生堂のこうした取り組みは、出生率の低さが懸念される日本において、貴重な教訓となるはずだ。

資生堂の業績予想、会社概要はこちら

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(週刊東洋経済2012年8月25日特大号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

リチャード・カッツ Richard Katz
The Oriental Economist Report 編集長。ニューヨーク・タイムズ、フィナンシャル・タイムズ等にも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。当コラムへのご意見は英語でrbkatz@orientaleconomist.comまで。
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