落第多いがガリ勉不要のフランス中学事情 教師も生徒も忙しい日本との違いは「ゆとり」

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フランスの教科書は、日本の教科書より一回り大きい。ノートも大きい。中学1年生が通学時に持ち運ぶ教科書類の重さは5キログラムほどあるという。リュックを背負って通学する子どもが多いが、なかにはキャスターつきのかばんを引いて登校する子どももいた。

中学校も小学校と同じように、6週間通学するごとに2週間の休暇というスケジュールだが、勉強はぐっと本格的になる。

フランス語では、モーパッサンやゾラ、モリエールらの作品に取り組む。英語は、日本の中学校と比べて進度が速い。文法を細かく学ぶより、大量の英文を読み、書くことに重点を置いている。驚いたのは数学だ。教師から、「計算機を用意するように」との指示があった。生徒は、授業中に計算機を使って計算するし、テストでも計算機を使ってよいことになっていた。ややこしい計算は機械に任せ、数学的なものの考え方を身に着けることを重視しているらしい。

重要な役割を担う学級代表の保護者

中学校に入学して早々、保護者会があった。学年の全体会の後、クラスごとに分かれ、保護者の学級代表2人を決めることになった。さっと2人の女性が手を挙げ、すんなり決まった。日本のPTA委員はなかなか決まらないが、ボランティア精神旺盛な人がいるものだと感心する。この学級代表は重要な役割を担っていると、後になってわかった。

フランスの中学校には、日本のような定期テストはなく、評価は授業時間中に実施されるテストやレポートなどで決まる。各学期の通知表は、自宅へ郵送される。評価の満点は20点で、各教科の本人の点数、クラス内の順位、教師のコメントなどが記されている。本人の全教科の平均点、クラス内順位という項目もある。子どもがクラスの中でどのあたりのレベルにいるか、得意な科目や苦手な科目は何か、一目瞭然だ。

「学級会議の意見」という欄もあり、学業の達成度について、総合的な見解が示されている。この学級会議は、教師、生徒と保護者の学級代表で構成されている。学期ごとに開かれ、クラスの問題について話し合ったり、生徒1人ひとりについて学業の達成度を討議したりする。この欄に「落第の恐れ」などと書かれたら、要注意だ。

学級会議が開かれる前に、保護者の代表はクラス全員の保護者に連絡して、「何か学校で問題はないか、学校に伝えることはないか」と意見を聞く。何を言ったらよいのかよくわからなかった筆者は、「特にありません」などと答えていた。

実は、子どもの成績が不振だったりすると、学級会議での心証を良くするために、代表にアピールする必要があるのだという。たとえば、「うちの子は英語が苦手だけれど、これから家庭教師をつけて特訓する」などと。保護者の代表は、学級会議で他の保護者の胸の内を代弁するという大事な使命があったのだ。

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