落第多いがガリ勉不要のフランス中学事情 教師も生徒も忙しい日本との違いは「ゆとり」
日本には塾がたくさんがあるが、フランスでは塾の存在感が薄い。数が少ないうえ、基本的には成績不振な子どものサポートを目的としている。フランスの中学校のテストは、丸暗記すれば高得点がとれるという類いではなく、記述が多く思考力や論理性が問われる。長時間の勉強が必ずしも好成績につながらない。成績優秀な子どもも、週末やバカンスにはしっかり休む。家族と旅行に出かけたり、友達と遊んだり、スポーツを楽しんだりする。そうして、気分転換したり見聞を広げたりした方が、勉強への集中力もアップして、結果として良い成績につながっているようだった。
日本の中学校では、週末や長期休暇中も部活動の練習や試合があって、教師も生徒も忙しい。フランスの中学校には、日本のような部活動はない。学校の課外活動で、希望者は週1回程度、水泳やサッカーなどのスポーツに参加することはできた。また、学校外で週1回程度、ダンスやテニス、乗馬などの習い事をしている子どももいた。
部活動がないので、教師も生徒も週末や長期休暇中には、時間にゆとりができる。運動会も文化祭もないので、その準備に時間を費やすこともない。フランスの中学校では、学校は勉強する場所で、息抜きは学校外でする、という区別がついていた。
就職で大きな役割を果たすコネ
夏のバカンス前の学級会議では、各生徒の進級の可否が判断される。成績が不十分な場合は、学校側と保護者の話し合いもなされる。「本校にとどまるならば落第だが、他校に転校する場合は進級とする」と、学校側が提案することもあるという。9月の新学期には、落第する生徒や転出する生徒、転入する生徒もあって、かなりの入れ替わりがある。なかには、外国やフランス国内の寮付きの学校に子どもを転校させる親もいる。「寮生活で生活のリズムを整え、勉強の習慣をつけさせる」という利点があるそうだ。小学校から落第はあるが、中学校になるといよいよ厳しくなるという印象だった。サルコジ前大統領も中学校で一度落第した。英語の成績が悪かったからという。
私の印象では、フランスの親には、より上を目指して子どもにガリ勉させようという切迫感のようなものはなかった。良い学歴があれば、高い収入の仕事につけるとは限らないからだ。フランスの就職では、コネが大きな役割を果たすという。コネがなければ、学歴に見合う仕事がみつけられないこともある。
しかし、ずばぬけた学歴がなくても、普通の仕事につければ年間5週間の法定有給休暇は誰にでも与えられる。高収入でなくても、バカンスを楽しみ身の丈に合った暮らしができれば、幸せではないか。子どもの学校生活が受験勉強一色にならないのは、そんなフランス人の人生哲学があるからなのだろう。
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