先に行われた地域圏議会選挙の第1回投票で、移民排斥を訴える極右政党・国民戦線(FN)が票を伸ばしたと ころからも、人々の心のブレが揺れて見えるようだ。フランス政府は、テロに対する非常事態宣言を少なくとも2月中旬まで延長した。表向きには平静を保とうとしているが、空港や駅などではふだんよりも警備が強化され、例年にない緊張感が漂っている。
フランスから海を渡って英国へ。ロンドンの繁華街はクリスマスプレゼントを買い求める人たちで大にぎわいだ。この街きってのショッピング街、リージェント・ストリートの歩道は人でいっぱい。誰もが両手にたくさんの買い物袋を提げている。ただ耳をそばだててみると、英語話者が割と少ないことに気がつく。つまり、欧州各地から競うようにロンドンへと買い物にやって来ているのだ。
英国では12月2日、下院がシリアでの空爆を承認、本格的にISIL掃討作戦に参加すると決めた。これによりテロの可能性が高まったという見方もあるが、ロンドンの街を歩いていて警察や当局による警備は手厚くなったという印象は特にない。パリでのテロ事件ののち、英国の入国審査を受けたが、特段にチェックが厳しくなったとも思えず、表向きには平常どおりだ。
「シリアのために!」、ロンドンで殺傷事件
隣国でテロ事件が起きても平穏を保っていたロンドンで5日、「シリアのために!」と叫びながら無差別に通行人を刺し、3人が重軽傷を負う、という事件が起きた。
発生場所はロンドン東部のレイトンストーンという地下鉄駅の構内。犯人がスタンガンで倒される瞬間や血だらけになった床の様子が映った、通行人が撮ったビデオはネットやテレビニュースを通じ、全世界に配信された。
同駅は2012年のロンドン五輪メイン会場にほど近い住宅街にあり、とてもテロ事件など起こるような場所には見えない。サッカーの元英国代表で日本でも一世を風靡したデビッド・ベッカムはこのレイトンストーン生まれで、2歳まで住んだという彼の家が事件場所から徒歩10分ほどのところにある。
実は筆者は五輪前からこのエリアに自宅を構えている。この町の自慢は「小学校ひとクラスの児童のルーツとなる国はほぼバラバラ」という「人種、国籍の多様性」に富んだところ。今回の事件でも、地元のモスクの責任者が「あのような事件を断固糾弾する。われわれはこの街の多様性を大事にしている」と声明を出したほどだ。
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