パート主婦を新たに悩ませる「106万円の壁」 手取り収入減だけでなく社会保険も考慮せよ

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このため、年収103万円を超えて多少の所得税を払っても、年収130万円以上にならないように働くパート主婦は多い。かりに年収120万円なら、雇用保険料、所得税、住民税合わせて約3万6000円(※2)の負担が生じるが、手取りは約116万円だ。これなら年収103万円の壁を超えて働く意味は十分にある。先述の調査でも、就業調整をしている女性(※3)の49.3%がこれを理由に年収を130万円未満に抑えている。

(※2)住民税は東京都、平成27年度の場合で試算。なお、住民税は前年の1年間の所得に対して課税される。ここでは前年の年収も120万円として試算した

(※3)就業調整をしており、かつ配偶者がいる女性
 

「130万円の壁」崩壊で、手取りが減る!

一方、パート主婦が「103万円の壁「130万円の壁」を意識して年収をそれ以下に抑えることは、税制・社会保障上の優遇を得られる半面で、女性の積極的な就労を妨げるとも指摘されてきた。そこで、働かないほうが有利になるような仕組みを除く目的で行われるのが、今回の改正だ。

これまでパートタイマーは、所定労働時間が通常の就労者のおおむね4分の3(おおよそ週30時間)以上でなければ、社会保険の加入対象とはならなかった。しかし冒頭でふれたように、従業員501人以上の企業であれば、週20時間以上で1年以上勤務が見込まれる場合は年収106万円から社会保険の加入対象になる。つまり、「年収130万円」の壁が「年収106万円」に引き下げられるというワケである。

それにより、会社員の夫の扶養に入り、年収130万円未満でパートをしている主婦、特に年収106万~130万円の人には、次のような選択が迫られることになる。「今までと同じ労働条件でパートを続けて、社会保険に加入するか」。あるいは「年収を106万円未満に調整し、社会保険に加入しないか」だ。

年収120万円の人を例に考えてみよう。現在は、雇用保険料、所得税、住民税を差し引いた手取りは約116万円で、社会保険料の負担はない。社会保険に加入すると、ここに健康保険料で年間約5万8000円(※4)、厚生年金保険料で年間約10万5000円の負担が増え、手取り収入は約100万円になってしまう。40歳以上65歳未満なら、さらに介護保険料約9000円もかかる。手取り年収約16万円のダウンだ。しかも、103万円の壁に合わせて働くよりも手取りが下回ってしまう。これなら社会保険に加入せず、年収103万円に収まるように勤務時間を減らした方が得だ、と考える人もいるに違いない。

(※4)協会けんぽ 東京都の場合で試算

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