パート主婦を新たに悩ませる「106万円の壁」 手取り収入減だけでなく社会保険も考慮せよ

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確定拠出年金は、運用成果に応じて受給額が決まるため、資産の値動きのリスクはあるが、税制面での優遇が大きい。厚生年金に加入することで、こうした老後資金作りの選択肢が広がるのはメリットだ。ただし、2017年1月からは、専業主婦でも確定拠出年金(個人型)への加入が可能になる。厚生年金部分からの年金受け取りはないが、国民年金に上乗せをすることはできるようになる。

夫の勤務先から家族手当(配偶者手当)が出ているなら、それも重要なポイントだ。家族手当の支給要件は税制や社会保障制度と連動することが多い。年収106万円の壁が導入されれば、それに合わせて家族手当の支給要件を変える企業も出てくるだろう。家族手当の有無や金額に応じて、妻のパート収入を調整するのも手だ。

働き方の変革に備えて、まずは現状把握を

このように、106万円の壁をめぐってパート主婦がどう働くかには、妻自身のパートによる手取り収入の問題に加え、公的年金の受取額、老後資金の準備、夫の会社の制度など、さまざまなポイントが絡んでくる。

さらに、勤務先の企業の対応にも注視したい。今回の改正の対象は大企業に限られるものの、政府は3年以内に検討し、中小企業にも拡大する方針だ。社会保険料は労使折半であるから、そうなれば企業の負担が増大し、中にはパートタイマーを社会保険に加入させないようにする動きも出かねない。すると、パートタイマーは自身の希望に応じて労働時間を決定することも、社会保険に加入することもできず、不本意に収入が下がってしまうことも起こり得る。

このような事態を防ぐため、政府は来年4月から対策を始める。パートで働く人について、2%以上賃上げしたり、週5時間以上勤務時間を増やしたりした企業に助成金を支給することで、パートタイマーの労働時間や賃金を上げることを目指している。

女性の社会進出が進み、一方で高齢化が進み老後資金対策への自助努力が求められる中で、積極的に働き、収入を上げることを促す仕組みは必要にして不可欠だ。しかし、パラダイムシフトには往々にして痛みを伴うことが多い。それに備えて、まずは自身の家庭、家計の状況を整理しておくのがおすすめだ。そして、自身が106万円の壁に直面した時にどう働き方を決めていくか、また勤務先で希望通りの働き方がかなわないとなったらどうするのか、今から身の振り方を考えておくのが賢明だろう。

※本文中の試算は一例であり、実際の金額とは異なる場合があります。本稿は会社員・公務員の妻を対象とした検証であり、夫が自営業などの場合には結果が異なります

加藤 梨里 FP、マネーステップオフィス代表取締役

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かとう りり / Riri Kato

保険会社、信託銀行などを経て2014年にファイナンシャルプランナーとして独立開業。家計相談、セミナーや雑誌・ウェブサイトでの執筆を中心に活動。慶應義塾大学SFC研究所上席所員として、健康増進とライフプランの関係をテーマに研究活動も行っている。https://moneystep.co

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