王子製紙を襲った中国リスクの正体

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王子製紙を襲った中国リスクの正体

暴徒と化した群衆が政府庁舎に乱入。地域のトップである共産党書記は糾弾された揚げ句、衣服を剥ぎ取られた。7月28日、中国江蘇省の南通市啓東地区。100キロメートルほど離れた江蘇王子製紙からの排水パイプライン建設に反対するデモが暴走し、文化大革命さながらの混乱を引き起こした。

実は、数日前からデモの呼びかけがあったことは日本大使館も把握していた。地元警察は、王子の工場周辺の警備態勢を固め、デモ抑え込みに自信を示していたという。前日には市幹部がパイプライン建設の一時中止を表明、鎮静化を図った。

だが、事態は市政府の予想を裏切った。28日早朝に群衆が押しかけたのは啓東の政府庁舎。やすやすと突入を許した政府は、午前中の段階で建設計画の白紙撤回を表明した。

このパイプラインは王子製紙誘致の条件として、南通市が約100億円を負担して建設するもの。現在は揚子江に排水しているが、2013年にはパイプラインを使って排水を黄海に流す。その量、1日当たり15万トン。排水先の塘蘆港は有名な漁港で、水産業への影響を懸念する声は以前からあったようだ。

さらに最近では、「排水には発がん性物質が含まれている」とのうわさが広がり、それが住民の強い反発を招いた。王子製紙は「まったくの事実無根。中国の国家基準値まで十分に浄化処理を施す」としている。

王子製紙にとって南通プロジェクトは世界戦略の要だ。計画上の総投資額は約2000億円。原料のクラフトパルプからの一貫生産体制を構築し、印刷用紙を主体に年産能力は120万トンに上る。13年までの第1期だけでも投資額は1701億円だ。 

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