欠陥だらけの軽減税率、政局優先で禍根残す 選挙対策で公明党の言いなりに
火の手は地方自治体からも上がっている。
高市早苗総務相は15日、消費税の軽減税率導入の地方財政への影響を問われて、「地方の減収はたいへん大きく、3000億円超となる。地方の社会保障の安定財源確保を」と注文をつけた。
ポピュリズムここに極まれり
さらに軽減税率は日本の政治課題も浮き彫りにした。
東京財団の亀井善太郎研究員は「高齢者までカバーできる消費税で社会保障費を賄う、という社会的合意があったはずなのに、それをひっくり返し、何のためにやるのかが見えなくなった」と批判。
軽減税率とは、各種の世論調査で6〜7割の高支持率を集める、人気政策である。が、亀井氏は、「新聞社の世論調査も誘導的。主権者が実際に何を望んでいるかに応えるのが政治なのに、与野党とも対応できないでいる。デモクラシーの危機だ」と警告する。
16日の自民党総務会で、同党の村上誠一郎衆議院議員は、「こういう荒っぽい方法を何回も続ければ、財政も金融も党も大変なことになってしまう」と述べたものの、党内では少数派だ。
日頃、財政健全化を訴える新聞、出版界も、業界として、自ら軽減税率の導入を求めている。「こんなところで政府にしっぽを振って権力批判ができるのか」と言われても、抗弁できないだろう。
今回の軽減税率騒動は、ポピュリズムに流され、機能不全に陥った、日本政治の危険な現状を映し出している。
(「週刊東洋経済」2015年12月26日-1月2日号<12月21日発売>核心リポート03を転載)
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