「銀行同盟」の創設はユーロを救えるのか--ハワード・デイビス パリ政治学院教授

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すなわち、(1)EU(またはユーロ圏)の全銀行をカバーする単一の預金保護スキーム、(2)金融システムにとって重要な多国籍銀行を対象にした、共通の整理当局および共通の整理基金、(3)これらの銀行に対する単一の欧州の監督当局、(4)欧州の全銀行の経営健全性を監督するための統一的な規則集、である。

銀行業の監督にかかわったことのある人であれば、これら4本の柱は注意深く構築する必要があることがわかるだろう。多くの国々は自国のスキームを作り上げるのに1世代をかけてきた。そして、この場合、三つの政治的問題をこれから解決しなければならない。

英国のEU離脱を招くリスクも

第一に、単一の欧州の銀行監督当局はまだ決まっておらず、ECBが権力掌握のチャンスをうかがっている。欧州の中央銀行当局者らは常々、マーストリヒト条約でECBに与えられた金融政策の権限が限定されていると憤慨してきた。銀行の監督はECBの業務に含まれていない。ただし、中銀当局者らは今、最も簡単な解決策は、この権限を拡大しECBを欧州全体にわたる事実上の監督者にすることだと論じている。

これは、欧州銀行監督機構(EBA)を設立したばかりの欧州委が望む結論ではない。EBAは欧州委自体と緊密に結び付いており、より広範な役割を担う場合の当然の候補であるとみられている。

欧州委の主張には一理あるが、問題もある。EBAの創設に先立つ駆け引きで、その拠点をロンドンに置くと合意されているのだ。ユーロ圏の監督当局がユーロ圏の外に拠点を置くことがどうしてありえようか。

第二の未解決の問題は、どのようにして銀行同盟を法的に実現するかだ。この規模の憲法改正には通常、新たな欧州の条約が必要となる。これには時間がかかるが、欧州の指導者らに手持ちの時間はない。

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